日産、ニスモとオーテックは一体何が違うか 似て非なる2つのサブブランドを徹底解剖

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肝心の走りについては、ニュアンスの違いこそあれ同じく「スポーティ」な方向性を追求したときに、似たようなところに行きつきそうな気もするところだが、実際にもセレナの場合、サスペンションチューニングは共通とされている。ただしタイヤについては、「セレナNISMO」にはハンドリングの応答性を重視してブリヂストンの「ポテンザ アドレナリンRE003」を、「セレナAUTECH」には長距離運転の快適性を重視してミシュランの「パイロット スポーツ4」を採用し、いずれもスポーティな銘柄ながら、お互いコンセプトに合った走りを実現するため差別化していることをお伝えしておこう。

量販車でも付加価値を求めるユーザーは少なくない

ご参考まで、本稿執筆時点における販売比率を見ると、NISMOシリーズやAUTECHシリーズを設定するモデルの販売比率を見ると、全体の3~10%程度だ。

また、オーテックが手掛けた「モード・プレミア」および「ボレロ」と「NISMO」の両方があるノートとマーチについてもこのとおりで、「10%」という比較的高い数字が見受けられることには少々驚いた。こうした量販車でも、付加価値を求めるユーザーは少なくないことは明らかなようだ。

なお、セレナNISMOの販売比率がノートやマーチに比べて少ないように見えるのは、セレナNISMOの場合はS-HYBRIDのみの設定とバリエーションが少ないことや、ミニバンという商品の性格によるものと思われる。

また、当然のことながら、こうしたコンバージョン車を購入するユーザーは、基準車に対して全体的にオプション装着率が高く、e-POWERの比率も高い傾向にあるなど、プラスアルファの料金を支払っても満足度の高いものを求める、クルマに対してのこだわりの強いユーザーが多いことが見て取れるという。彼らにとっても、「NISMO」と「AUTECH」のように、より好みに合ったクルマが選べる環境が整うのは喜ばしいことに違いない。

日産では今後、「AUTECH」ブランドをより多くのユーザーに届けられるよう、SUVやコンパクトカーなどラインアップの拡大を図るとともに、ブランドイメージを高める取り組みとして、オーテックジャパンの匠の技を活用し、内装の革の色を選べるようにした「パーソナライゼーション・プログラム」を展開していく予定という。近いうちにその詳しい内容が明らかになる見込みだ。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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