BMW「M5」が最新進化で見せた驚愕の走行性能 600馬力受け止める4WD化は何がスゴいか

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ステアリング(写真:BMWのサイトより)

そこから旋回中は前後同率か若干リア寄りで駆動力は調整され、最大の安定性により路面の起伏などにも左右されない旋回を続ける。そしてカーブ脱出で加速しようとアクセルを踏むと、前輪駆動主体でクルマを前にまず引っ張って車体の傾きを増やさず車体を加速させるキッカケを作り、そこから徐々に後輪駆動力が増えて後ろからも押され出す。

まさに進入・旋回・脱出を最大効率で得ようとしたときの動きがそこにはあり、これが限界領域だけでなく普段の街中ドライブから気がつかない領域で行われて、姿勢変化の少ない穏やかさまで磨きがかけられているのが新型M5。

まさに全性能がとても高く仕上げられたM5。低重心であること。ボディ剛性が高いこと。それにより路面に張り付くような感覚が強いことや、アクセルを踏んだ際には刺激的な吸排気音がすることなどは、この手のモデルで言えば当然なことでもあるので、競争激しいハイパフォーマンスカー市場でも光る特徴に注目をしてレポートしてきた。

羊の皮を被った狼

最後に今回もまた基本テイストは、羊の皮を被った狼だ。そこにはメルセデスの「AMG」のように狼であることをわかりやすく表現するような意図は感じない。

ノーマルモデルとの違いを知っている人でなければ遠目では判別できないほど控えめな外観。エンジン音にしても掛けた瞬間の暖気モードとスポーツモードにして深くアクセルを踏み込んだときの刺激的な音を除きハイパフォーマンスカーとしてはかなり穏やか。それを踏まえると、絶えず非日常を得たい人の心は満足させられないだろう。

逆にハイパフォーマンスカーを意識することなく普段から乗りこなし、その気になれば激しい刺激と迫力で走れる世界観を好きな人にはうってつけだ。しかもMモデルとしては初めてハンドル支援まであるレベル2運転支援機能まで装着され高速道路での移動がとても楽になったことや、トランスミッションも先代モデルで採用していたツインクラッチ式を改め通常ATを採用したなど、今まで以上に普段使いがしやすくなり“羊の皮を被った狼”的な世界を追求してきたように思えた。

個人的にはハイパフォーマンスカーであることをひた隠しすぎではと思うが、4輪駆動で得た性能と世界観の広がりに大拍手を送りたい完成度に仕上がっている。

五味 康隆 モータージャーナリスト

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ごみ やすたか / Yasutaka Gomi

自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。高い運転技術に裏付けされた評論と、表現のわかりやすさには定評がある。「持続可能な楽しく安全な交通社会への貢献」をモットーとし、積極的に各種安全運転スクールにおける講師を務めるなど、執筆活動を超えた分野にもかかわる。また、環境分野への取り組みにも力を入れており、自身で電気自動車やハイブリッド車も所有。https://www.facebook.com/yasutakagomi53

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