そこから旋回中は前後同率か若干リア寄りで駆動力は調整され、最大の安定性により路面の起伏などにも左右されない旋回を続ける。そしてカーブ脱出で加速しようとアクセルを踏むと、前輪駆動主体でクルマを前にまず引っ張って車体の傾きを増やさず車体を加速させるキッカケを作り、そこから徐々に後輪駆動力が増えて後ろからも押され出す。
まさに進入・旋回・脱出を最大効率で得ようとしたときの動きがそこにはあり、これが限界領域だけでなく普段の街中ドライブから気がつかない領域で行われて、姿勢変化の少ない穏やかさまで磨きがかけられているのが新型M5。
まさに全性能がとても高く仕上げられたM5。低重心であること。ボディ剛性が高いこと。それにより路面に張り付くような感覚が強いことや、アクセルを踏んだ際には刺激的な吸排気音がすることなどは、この手のモデルで言えば当然なことでもあるので、競争激しいハイパフォーマンスカー市場でも光る特徴に注目をしてレポートしてきた。
羊の皮を被った狼
最後に今回もまた基本テイストは、羊の皮を被った狼だ。そこにはメルセデスの「AMG」のように狼であることをわかりやすく表現するような意図は感じない。
ノーマルモデルとの違いを知っている人でなければ遠目では判別できないほど控えめな外観。エンジン音にしても掛けた瞬間の暖気モードとスポーツモードにして深くアクセルを踏み込んだときの刺激的な音を除きハイパフォーマンスカーとしてはかなり穏やか。それを踏まえると、絶えず非日常を得たい人の心は満足させられないだろう。
逆にハイパフォーマンスカーを意識することなく普段から乗りこなし、その気になれば激しい刺激と迫力で走れる世界観を好きな人にはうってつけだ。しかもMモデルとしては初めてハンドル支援まであるレベル2運転支援機能まで装着され高速道路での移動がとても楽になったことや、トランスミッションも先代モデルで採用していたツインクラッチ式を改め通常ATを採用したなど、今まで以上に普段使いがしやすくなり“羊の皮を被った狼”的な世界を追求してきたように思えた。
個人的にはハイパフォーマンスカーであることをひた隠しすぎではと思うが、4輪駆動で得た性能と世界観の広がりに大拍手を送りたい完成度に仕上がっている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら