ローソンのコーヒーは、なぜ「手渡し」なのか 負担軽減のため、競合は「セルフ方式」を採用

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マチカフェでは一部の商品を除き、厳格な基準を満たした農園の豆を使用するなど、風味や品質にこだわっている(記者撮影)

手渡し式は従業員の接客スキルのアップを図ることを狙っている。2012年からはコーヒーの対面販売を通して、商品知識や接客力を向上させた人を本部が認定する「ファンタジスタ」制度を設けた。当初は筆記試験のみだったが、現在はブレンドコーヒーの提供の仕方を審査する実技試験もある。これまでに1万3000人超のファンタジスタが誕生した。

接客上級者のノウハウを共有

マチカフェに関しては、さらに上級の制度「グランドファンタジスタ」を設けている。ファンタジスタの中から各地の支店の代表として選出される。加盟店オーナーや各店を巡回するSV(スーパーバイザー)から、「より高い接客ノウハウを持っている」というお墨付きを得た従業員で、約300人しかいない。

ローソンの竹増貞信社長は、スマートフォン決済の実験の狙いを「レジ待ちのストレスを一気に解決する」と説明する(撮影:風間仁一郎)

接客ノウハウや黒板POPの書き方など、グランドファンタジスタの取り組みを全社で共有することを目的として、全国大会も行っている。グランドファンタジスタの1人である尾鷲理恵さんは「苦手意識があった接客に自信が持てるようになった。ノウハウは営業日誌を通して他の従業員にも共有するようにしている」と話す。

 加盟店人財開発部の平石知子氏は「抽出を待っている間に新商品のオススメをして次の購買につなげることができる。コーヒーだとなぜか家族の話をしてくるお客さんも多い。接客レベルの高いグランドファンタジスタになると、家族構成をもとにおせちの販売など、催事の獲得につなげているという例も聞く」と話す。

とはいえ、セルフ式と比べてコーヒーの手渡しは従業員の負荷につながっているようにも見える。ローソンの竹増貞信社長も「サービスを支える人手が圧倒的に足りなくなってきている」との認識を示し、会社として自動釣銭機付きレジやタブレットなど業務効率化のための設備の導入を進めている。

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