真剣に結婚できる相手を探そう。そこで、私を訪ねてきた。そこからスタートした婚活だった。
「だけど、見合いしてみたら、好きになれる人がいない。あと断られるのが続くと、気持ちがすさみますよね。以前、3度ほど食事をした女性に断られて、その理由が、 “早口でしゃべるのが嫌だ”と。えっ、そんな理由?って。だけど、その女性が僕を好きになっていたら、早口なんて気にならなかったはずですよ。極端な話、好きでもない女のリストカットの傷跡を見たらドン引きするけど、好きになっていると“そばにいてなんとかしてあげたい”って気持ちになる。人を好きになるって、そういうことじゃないですか」
確かにそのとおりだろう。さらに、言った。
「バツイチ、子持ちがいいのかな」
「これまで、バツイチで子どものいる女性は、見合い対象から外してきたけど、逆にそっちのほうがいいのかな。シングルマザーで苦労をしているぶん、人を受け入れる許容範囲が広いのかもしれない。ただ、自分がそういう環境で育ってきたんで、そこは避けたかったんですけどね」
隆造の両親は、隆造が物心ついたころから仲が悪く、小学校高学年のときには別居、中学に入って離婚をした。隆造は母の元に残った。
「離婚後、母親には彼氏ができたんですよ。相手は勤めていた会社の社長。不倫でした。中学、高校の頃って、割り切れない男女の仲があるのは頭では理解できても、思春期なんで母親の不倫は受け入れられなかった。というか、母親が女になっているなんて、知りたくもないんですよ。ただ、その社長さんは、母親を交えて僕に食事をご馳走してくれたり、プレゼントをくれたり、よくしてくれた。そんなふうに優しくされると感謝する反面、母親が何か女の武器を使っているように思えて、ちょっと嫌悪感も湧いた」
学生時代は不倫をする母を反面教師にして、男女の関係には潔癖なものを求めてしまい、どこかで恋愛を遠ざけてしまった。
「今になってみれば、生きていくってきれいごとでは済まされないし、僕を大学まで出してくれたんだから、母の生き方は認めています。ただ、なんだろうな、そういう家庭環境で育っていなかったら、こんなに恋愛をこじらせることもなく、もうとっくに結婚していた気がするんですよね」
そして、「子持ちの女性がいいかもしれない」と、改めて考えるようになった経緯については、こんなことも言った。
「父親ではない男性に、経済的に助けられたりやさしくされたりして僕は大きくなったわけだから、子どもがいる女性と再婚して、その子どもをかわいがるのは、ある意味還元なのかなって。ただ、どんな女性と結婚するにせよ、相手を好きにならないとダメですよね。“好き”は、デカい。好きな相手なら、どんな欠点があろうと、たとえ片目がなかろうと、結婚に踏み切れる気がするんです」
お見合いは、まずは身上書で相手を選ぶ出会いなので、どこか冷静になってしまい、一瞬にして恋に落ちるような大恋愛は難しいかもしれない。また、うまくいかないことが続くと、自己否定されたような気持ちになって婚活疲れを起こすのも確かだ。そうなると、失敗した経緯をあれこれ分析し、そこに答えを見つけようとしても見つからず、負のスパイラルに巻き込まれていく。
しかし、1人として同じ人間は存在しないのだから、あれこれ頭で考える前に、どんどん出会ってほしいなと思う。お見合結婚で幸せになっている人はたくさんいるのだから。
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