「鉱山開発」こそが超有望な北朝鮮ビジネスだ 300兆円規模の埋蔵量を誇る宝の山に期待大

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アジア最大の鉄鉱山である茂山(ムサン)鉱山も注目に値する。同鉱山は小さな川を挟んで、中国・吉林省と接する国境地域にある。ここは露天掘りでも有名。鉄の含有量を意味する品位は低いが、中国では高価格で買い取られている。同鉱山の鉄鉱石が磁力鉱であるためだ。磁力を帯びているため、これを利用して簡単に品位を高める一次加工が可能である。

鉱物資源公社関係者は「北朝鮮の鉄鉱石は磁鉄鉱が多く、品位が低くても簡単に分離でき、実際に北朝鮮も清津(チョンジン)地域へ鉄鉱石を運び、そこで分離する作業を行っている。

中国からは茂山鉱山を直接眺めることができるほど近く、中国側の税関を通じて輸出を多く行っていたこともある」と説明する。埋蔵量が多いことで北朝鮮が自慢していた希土類にも関心が集まっている。ただ、希土類の埋蔵量を正確に算定するためには、南北共同での現地調査が必要だ。

黒鉛鉱山などで成功事例も

2回目の南北首脳会談があった直後の2007年、北朝鮮は中国の輸出用船舶で韓国に石炭を輸出し、2009年には47万tにまで輸出量が増えた。韓国が投資した北朝鮮の炭鉱開発事業は10件。公共分野への投資が7件、民間企業による投資が3件となっている。瑞川地区の3鉱山は成果なく終了した。

鉱物資源公社が北朝鮮側と合弁企業を設立して開発した、鼎村(チョンチョン)の黒鉛鉱山は生産に成功し、輸出までできるようになった。収益は生産物分配方式とされ、15年間生産される製品とバーターで、投資金を回収する計画だった。2010年の5.24措置以降には、すべての事業が中断されている。

北朝鮮の地下資源開発がこれまでの経済協力事業を根底から変えるほどの威力を持つのは、北朝鮮が保有する資源の質と量が大きいためだ。北朝鮮から原材料を輸入するようになれば、運送費と時間を大きく節約できる。鉄鉱石など鉱物資源は重量があるため、コスト全体に占める輸送費の割合が高い。

たとえば、鉄鉱石1トン当たりの価格が60ドルとすれば、運送費も60ドル程度かかる。企業は一般的に原材料契約を3年単位で行っている。その代わり、南北経済協力が現実に動き出せば、韓国企業が北朝鮮に行って鉱山を開発したり、稼働まで協力できる。かつて鉱物資源公社が北朝鮮と結んだ契約のように、投資金は北朝鮮産の鉱物で回収もできる。

北朝鮮における鉱物採掘量はこれまで減少してきた。これは埋蔵量が減ってきたのではなく、設備があってもカネがなくて稼働できないケースがあり、経済制裁で輸出もできないためだ。エネルギー経済研究院関係者は「鉄鉱石から鉄をつくるときにはコークスが必要だが、制裁で輸入できていない」と言う。現在、北朝鮮の鉱山稼働率は、20%程度とされている。

北朝鮮の鉱物資源は技術さえ導入すれば、経済性がはるかに高まるという。中国側の資料によると、鉄鉱石の場合、豪州産とブラジル産の品位は通常63%程度だが、中国の鉄鉱石は31%、北朝鮮産は28%。中国が自国の鉄鉱石の品位が高いのに、価格がそれほど安くなくても北朝鮮産の鉄鉱石を輸入していたのは、北朝鮮産が品位を簡単に引き上げることができるためだ。中国は北朝鮮の鉄鉱石を豪州産の価格の80%程度で輸入してきた。

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