(このひとに5つの質問)ミカ・ベフビライネン ノキアシーメンスネットワーク最高業務執行責任者(COO)
07年4月にフィンランド・ノキアと独・シーメンスの通信インフラ機器部門が合併し、新たな強者連合が誕生した。最高幹部のベフビライネン氏に巨艦のグローバル戦略を聞いた。(『週刊東洋経済』7月14日号)
世界トップを狙うには日本での成功が必要だ
1 これまでライバルだったノキアとシーメンスの事業部門が手を結んだ狙いは。
スケールメリットを確保するためだ。通信インフラ機器業界では新技術の対応に、投資額が急増している。合併後の新会社では全社売上高(2006年度は2兆8519億円)の1割以上を研究開発費に充てる。現状の世界シェアは(スウェーデンのエリクソンに次いで)2位だが、トップを目指していく。そのためには世界で2番目に大きな日本の通信市場で成功する必要がある。
2 日本ではNECと携帯電話基地局で事業提携しています。
以前からシーメンスと提携関係があるNECは、今後も重要なパートナーになる。ただ、今後は日本の通信機器メーカーも他社との合従連衡が必要だろう。
日本のメーカーは自国の通信事業者(キャリア)に大きく依存している。だが、通信方式の国際標準化で業界のグローバライゼーションが急速に進んでいる。シーメンスも以前はドイツテレコムに依存していたが、合併によって世界で戦える体制が整った。日本企業もこのトレンドを見据える必要がある。
3 事業部門とはいえ、二つの巨大企業を融合させるのは至難の業ではないでしょうか。
確かに互いの企業文化は違う。シーメンスは高い技術力を堅持していく企業で、一方のノキアは市場に応じて柔軟に変化する企業だ。これをうまく融合させるには、まず初めに周到な計画を作り、実現に向けて汗をかくことが重要だ。現状、経営陣にはノキア出身が多いものの、どちらが主導権を持つというわけではない。新会社の滑り出しは上々といえる。
4 トップの追撃には、どういった市場が重要ですか。
重要な市場に米国、日本、韓国の三つが挙げられる。このほかの市場では、すでに首位か2位の地位についている。日本市場は移動・固定系ともに技術の移行期にあり、他国に比べて通信インフラの投資額が大きい。これはわれわれにとって大きなチャンスだ。
5 シーメンスは中国の第3世代(3G)移動通信技術に強みを持っていました。中国市場にはどう取り組みますか。
その「資産」は受け継いでいる。中国は3種類の3G技術が導入される見通しで、われわれは(シーメンスが開発協力した)中国独自のTD-SCDMA方式とWCDMAの2方式に対してビジネスができる。中国市場では2位につけており、首位は現地企業の華為科技。ものすごい価格競争力を持っており、非常に手ごわい相手だ。華為は日本市場にも参入しており、ここでもしのぎを削っていくことになるだろう。
(書き手:杉本りうこ 撮影:尾形文繁)
Mika Vehvilainen
1961年フィンランド生まれ。ヘルシンキ・スクール・オブ・ビジネス修士号。91年ノキア入社。欧米・アジアの製品事業で販売・マーケティング戦略等を歴任。合併した新会社発足と同時に現職。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら