母の肋骨を折った不良少年、更生への長い道 自分の体験をもとに出所した若者たちを支援

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きっかけは、何気なく夕方に見ていたテレビ番組だった。2年の刑を終え、義理の父親の会社で営業の仕事をしていた渋谷さんは、毎日を過ごすことに必死になっていた。獄中で、「社会に出たら自分と同じような境遇の少年を助けたい」と思ったこともあったが、実際に出てみると、そんな余裕など少しもなかった。以前つるんでいた暴力団や右翼団体、不良仲間などから来る連絡を断り、ひたすら目の前の「更生」に向けてがむしゃらに走っていた。

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そんなある日、ふとテレビを見ると、とあるNPO団体が特集されていた。その団体は元非行少年が設立した団体で、少年院に入ってしまった少年達のサポートをしているという。拠点は愛知。「やるしかない」。気付いたら電話を握りしめていた。出所から8年経った日のことだった。

NPO団体として関わる時期は、少年達が出所して半年間。それ以降はNPO側の担当の人間と少年達との個人間のやりとりに変わる。現に、渋谷さんが現在個人的に連絡を取り合っている少年は20~30人。そのうち、NPOの保護期間にある少年は、わずか5人だ。雑談から真剣な相談まで、様々な場面で渋谷さんは彼らと連絡を取っている。少年達の多くは深夜に連絡をしてくるため、毎日朝の4時まで眠ることができない。しかも、深夜の連絡のほとんどは、深刻なトラブルであるため、深夜に電話をかけたり車を走らせたりすることも少なくない。

【8月10日15時00分追記】初出時、渋谷さんが支援を行った少年のエピソードを転載していましたが、ご家族からの申し出があり、当該箇所を全文削除しました。

そばで寄り添うということ

少年達を支えても、彼らをとりまく環境が更生を阻止することがほとんどで、目に見える成果は簡単には得られないのが現状だ。しかし、それでも彼らを決して諦めず、信じた先に、彼らの心からの笑顔があれば、それで幸せだという。

「4畳半の小さな部屋でもいいから、いつか彼らが築き上げた家族と一緒に鍋を囲んで、思い出話に花を咲かせたい」。そんな日を夢見て、彼は今日も少年達のところへ向かう。

高橋 惟 上智大学文学部新聞学科 学生

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たかはし ゆい / Yui Takahashi

2018年4月現在は4年生。

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