日本人は「マイナンバーの活用」で損している 北欧で起きているイノベーションに学ぼう
北欧諸国がどれだけ効率性を重視しているかは、住所情報の共有によく表れている。
フィンランドでは、財務省の一機関である住民登録センターが、国民ID、氏名、生年月日、出生地、性別、住所、市民権、家族関係などの個人情報の国家データベースを管理している。
住所情報を地方自治体が変更すると、国のデータベースだけでなく、そこに接続された公的機関や民間企業のデータベースにも反映される仕組みになっている。
反社会的企業と認定されないかぎり、すべての民間企業がこのような住民登録センターの自動更新サービスを利用できる。
顧客の現住所確認の調査とデータベース更新に膨大なコストをかけている日本企業と比べると、フィンランド企業がどれだけ大きなメリットを受けているかがわかるだろう。
個人にとっても住所変更手続きが省けるメリットが大きいため、住所情報共有を拒否する市民の申し出は年間に1件あるかどうかにすぎないという。
また、フィンランドの社会保険庁は、デジタル経済が進展すると自営やフリーランス、パートタイムといった柔軟な働き方が増加すると予想している。そうなった際に従来の雇用行政手続きがますます複雑化するため、それを避けるために国民IDを活用した電子政府の推進と並んで、社会保障制度の見直しも検討している。
ネット手続き30分で会社設立
世界最先端のIT立国といわれるエストニアは、フィンランドの取り組みに学びつつ、より実験的なIT活用を推進している。オンラインでの本人確認、電子署名などに使えるeIDカードが広く普及し、近年はその機能をスマートフォンに格納したモバイルIDが広まっている。
加えて、エストニア国籍を持たず、同国に住んでいない個人にもeIDカードを発行して、電子居住権を与えるという「e-Residency」プロジェクトも行っている。
eIDによって会社設立の手続きをオンラインで30分程度で完了できるようにしたり、世界で初めてインターネット投票を実現したりしている。近年は国家レベルでブロックチェーン応用に取り組むなど、DXの先頭を走る国といえる。
これらの国に共通するのは、従来のアナログの仕組みを前提にしてデジタル化を進めたのではなく、デジタルファーストで従来とはまったく異なる新たな仕組みを考えて構築した点にある。これがDXの最も重要なポイントである。
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