「赤報隊事件」30年、謎はどこまで晴れたのか

いまだに犯人は闇の中ではあるが…

事件当初から関連を疑われたのは大きく分けて2つ。「右翼」と「宗教団体」である。本書『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』の第2部は右翼への取材の核心部分をまとめたものである。

警察が絞り込んだ「9人の右翼関係者」のみならず、著者は様々な伝をたどり、30年間で全国各地300人の右翼関係者に取材してきた。時には膝詰めで一晩中議論しながら、彼らの思想や行動を取材していく。そもそも右翼団体の多くは朝日新聞に反感を持っている中で、丹念に足を運んで話を聞く作業は困難も多かっただろう。右翼と言っても思想や政治的背景にも、行動様式にもそれぞれ違いがあるが、こうした日本の右翼を俯瞰し図式化することで、赤報隊が右翼のどこに位置するのか分析しようとしたのである。

過去に町長襲撃事件を起こして服役したことがある男、右翼とは一見関係なさそうな名画盗難事件から浮かび上がった意外な人物、国士を養成する私塾を主宰する人物、などなど多くの人間が登場する。彼らが著者の取材に対して語る「思想」は、彼らが事件の実行行為に直接関係していなくても、精神的には事件と無縁ではないと思わされる。

実際、彼らも赤報隊への共感を隠さない。最近、右翼的な考え方がクローズアップされることが増えたが、こうした思想の水脈は、昨日今日のものではなく、あの敗戦を超えてなお、一度たりとも途切れることなく流れ続けているのだということが浮かび上がってくる。

ある宗教団体への取材

第3部は、ある宗教団体への取材の核心部分である。31年前、朝日新聞はこの団体を強く非難する論陣を張っており、激しい抗議を受けていた。また、この団体の信者の中には銃砲店を経営するものが複数おり、いわゆる「秘密軍事部隊」の存在も囁かれていた。

この団体に対しては警察も捜査に力を入れていたが、特定の人物を事情聴取するには至らず、この団体が組織として赤報隊事件に関与したという証拠はない。朝日が団体を非難する連載を終えたあとも赤報隊の犯行が続いたことは、団体と赤報隊が無関係の証拠とも言える。が、それでも、著者の取材により見えてきた団体の一面は、この国に存在する様々な思想の中でも重要視するべき流れを考える上で、示唆に富んでいると思う。

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