「フォレスター」は本当にターボを捨てるのか 5代目は当初、自然吸気エンジンのみで登場

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北米で展開する「アセント」の外観(写真:SUBARU提供)

もうひとつのダウンサイジングターボについては、2017年11月に発表した北米市場向け大型SUV「アセント」に積まれる2.4Lターボで具現化している。

アセントのニュースリリースにはこのエンジンについて「6気筒を凌駕する動力性能と燃費性能を実現」と書いてあることから、北米向け「レガシィアウトバック」が積んでいる3.6L水平対向6気筒自然吸気の後継になるのだろう。

スペックは

またスペックを見ると、現行フォレスターの2Lターボが206kW(280ps)なのに対しアセントの2.4Lターボは193.9kWと、排気量拡大にもかかわらずダウンしており、従来のSUBARUのターボとの性格の違いがわかる。

アセントに搭載されている直噴ターボエンジン(写真:筆者撮影)

2.4Lという数字を中途半端に感じる人がいるかもしれないが、エンジニアリング主導の傾向が強い自動車メーカーであるSUBARUは、これまでも性能面を優先して排気量を設定することがあった。

たとえば現行インプレッサでは税制上有利な1.5Lではなく、1.6Lと2Lの自然吸気エンジンを積む。以前試乗会でエンジニアに聞いたところ、1.5Lでは力不足であることから燃費も悪くなるとのことで、総合性能の高さから1.6Lを選んだと語っていた。

噂ではこの2.4Lに続き、1.5Lと1.8Lの新世代ダウンサイジングターボが加わると言われている。価格面で有利な自然吸気も存続すると思うが、前者は2L、後者は2.5Lの自然吸気エンジンを置き換えるポジションだと予想できる。フォレスターに積むとすれば後者になるだろう。

こうなるとトランスミッションが気になる。現在SUBARUの自動変速機は、前述の6気筒が5速トルコン式ATを組み合わせるほかは、すべてリニアトロニックと名付けたCVTになっている。

筆者はホンダ「ステップワゴン」や三菱自動車「エクリプスクロス」などの試乗を通じて、ダウンサイジングターボとCVTの相性は良いと感じている。低回転から大きなトルクを発生するので、回転を上げなくても発進や加速に必要な力が獲得できるからだろう。

ただしマツダがATで統一したのに続き、トヨタやスズキはダウンサイジングターボを中心にATの組み合わせを増やすなど、グローバル志向の強い日本車の中にCVT離れの動きがあることも事実である。

中期経営ビジョンでSUBARUは、2020年のありたい姿を「大きくはないが強い特徴を持ち質の高い企業」としている。質の高さにこだわるのであれば、高級車での採用率も高い多段トルコン式ATに目を向けても良いのではないかと個人的に思う。

この規模の自動車メーカーでPHVとダウンサイジングターボ、トランスミッションの開発を同時並行で進めるのは大変かもしれない。しかし排気量を含めて最良を目指したエンジンを作り上げたのであれば、それをしっかり堪能できるトランスミッションがふさわしいのではないだろうか。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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