共学校が男尊女卑を促しかねないという逆説 もはや絶滅危惧種!?男子校・女子校の魅力

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また、女性にとって「産む選択」にはタイムリミットがある。女子たちは、中高生のうちから現実的に10年後、20年後の自分を思い描いているものだ。そのことが男子校にいるとわからない。その点、共学校の教室の中では、女子がどんなライフプランを思い描いているのかを、男子も間近でなんとなく感じることができる。逆に言えば、ここは男子校という環境のデメリットであろうと思う。

さらに、共学校であっても、男子だけの部活、女子だけの部活など、男女をわけて活動する機会があれば、男女別学校の空気を部分的に経験することはできるが、その逆はない。

男子校も女子校も共学校も選べる自由が大切

結論を言えば、おおかたの子どもたちは、男女別学校に行こうが共学校に行こうが大きな差にはならないと私は思う。どちらにもうまく適応し、それぞれの環境で学ぶべきことを学び、どちらの道を通ったとしても最終的には「その人らしく」育つはずだと信じている。

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しかし中には、共学という環境が合わない男の子、女の子というのもいるのではないだろうか。男子校という環境でこそ伸びやすい子、女子校という環境でこそ伸びやすい子、共学校という環境でこそ伸びやすい子もいるのではないか。それこそ個人差だ。

以上の観点から、現時点での現実的な教育環境としては、男女別学か共学かという議論ではなく、男子校も女子校も共学校も選べる教育の多様性を担保することが大事なのではないかと思う。

とはいえ男子校文化も女子校文化も風前の灯火であることは先述の通り。これ以上減らせないのではないだろうか。「男子校・女子校は男女共同参画の趣旨に反するから禁止すべき」という主張こそ、教育の多様性を損なうという矛盾を無視することはできまい。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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