「北朝鮮的な資本主義」のいびつすぎる内実 法律によって押さえ込もうとしているが…

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国の物資供給計画を上回る「追加的需要」に対しては、「社会主義生産物市場」を通じて資材調達を行うものとされている。つまり、中央政府によって生産や供給が計画されていない資材や製品であれば、どのようなものであっても製造、調達し、市場で販売することが許されている、ということだ。

公的機関の間で物資を売り買いする仕組みとして、市場メカニズムが合法的に存在することを認めているわけである。

民間金融市場の存在が暗黙の了解に

供給管理法と同じく2015年に改定された農場法は、ここ数年で大きく内容を変えてきている。ここで着目すべきなのは、民間からの資金調達が合法化されたことに加えて、民間金融市場の存在が暗黙の了解となっている点だ。関連条項は、次のような内容となっている。

「第43条(資金の活用と監査義務)

農場は生産拡大や農民の生活保障といった目的に適うよう、合理的に所得を配分または活用しなければならない。農場はまた、関係機関の定める手続きに則って、住民が有する未活用資金を事業に用いることができる」

ここに記されている「住民が有する未活用資金」とは、北朝鮮の金融用語で、国有銀行に預けずに国民が手許に保管している現金や保険証書、債券を意味している。上に示したような条項が導入される以前は(こうした法改正は2014年または2015年に行われた模様だ)、集団農場には住民から資金を吸い上げる直接的な権限はなかった。ただ、脱北者の証言によれば、このような資金調達は、現実には法律が改正される以前から行われていたようだ。

2015年改正の企業法にも、ほぼ同じ規定が盛り込まれている。

「第38条(資金管理)

国有企業は必要に応じて、銀行から資金を借り入れるか、住民が有する未活用資金を利活用し、事業運営資金の不足を補うことができる」

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