フリーゲージ絶望「長崎新幹線」膨らむコスト 新大阪乗り入れへ「地下新ホーム」案も登場
もう1つの方法であるミニ新幹線は、在来線の複線のうち片方のみを新幹線用に改修し、在来線と新幹線の2つの単線が並ぶ形とする「単線並列」と、複線の両方を新幹線規格と在来線規格の双方の車両が走れるように改修する「複線三線軌」の2パターンが試算された。費用は複線三線軌で約2600億円、単線並列で約1700億円と比較的低コストで済み、投資効果も前者が2.6、後者が3.1と、フル規格に比べてもそれほど遜色ない。収支改善効果はそれぞれ約2億円、約9億円で、フル規格よりは低いものの現在より向上する。山陽新幹線乗り入れも理論上可能だ。
だが、在来線を改修する区間は最高速度が抑えられるため、所要時間の短縮効果は限定的だ。ダイヤ上の制約が少ない複線三線軌でも、リレー方式と比べて短縮される所要時間は長崎―博多間で8分。その一方で、工期は単線並列が10年、複線三線軌はフル規格より長い14年を要する。在来線の運行を続けながら工事を行わなければならず、457カ所ある橋梁の改修がネックとなるためだ。
財源はどうするのか
この試算結果を見れば、全線フル規格を求める声が高まるのもうなずける。だが、大きな問題として立ちはだかるのが財源だ。今回の試算では、フル規格で整備した場合の開業予定見込みを「平成46年度(2034年度)」としているが、これは調査や環境アセスメントに要する時間は含んでいるものの、財源の確保については考慮していない。
整備新幹線の建設費は、運営を行うJRが施設を整備・保有する鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に対して支払う施設の使用料(貸付料)を除いた部分の3分の2を国、残り3分の1を地方自治体が負担することになっている。
もしフル規格で整備するとなった場合、焦点となるのは佐賀県の対応だ。同県は現行の在来線特急でも博多―佐賀間が30分台で、新幹線開業による所要時間の短縮効果が特に見込めない一方で、約1100億円という高額の負担が見込まれることから、フル規格については否定的な見解を示している。フル規格で整備する場合、同県内では並行する在来線をどうするかという問題も新たに発生する。
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