フリーゲージ絶望「長崎新幹線」膨らむコスト

新大阪乗り入れへ「地下新ホーム」案も登場

九州新幹線長崎ルートは、福岡市から佐賀市付近を経由して長崎市までを結ぶ、いわゆる「整備新幹線」の一路線。このうち、一般の新幹線と同じ「フル規格」の新路線を建設するのは長崎―武雄温泉(佐賀県)間の約66kmで、武雄温泉―新鳥栖間の約51kmは在来線、新鳥栖―博多間約26kmは九州新幹線(鹿児島ルート)の線路を活用し、FGTによって直通運転を行う計画で整備が進められてきた。

新幹線と在来線の線路幅に対応するフリーゲージトレイン(第3次試験車)の台車(記者撮影)

だが、FGTは試験車両での耐久走行試験中に車軸の摩耗などのトラブルが発生。順調に進んだ場合でもギリギリのスケジュールだった開発は遅れ、実用化のメドが立たない状況となった。その結果、2022年度の開業から当面の間は、長崎―武雄温泉間は新幹線、武雄温泉―博多間は在来線特急に乗り継ぐという「リレー方式」での運行を余儀なくされることになった。

FGTの開発遅れを受け、与党の検討委は昨年9月、国交省に対して新鳥栖―武雄温泉間をFGT、フル規格、そして在来線の線路幅を新幹線に合わせて広げる「ミニ新幹線」の3方式で整備した場合の費用と投資効果などの試算を指示した。

費用も効果も高いフル規格

試算結果から見えるのは全線フル規格の優位性だ。2022年度の「リレー方式」による暫定開業後に必要となる追加費用は約6000億円と圧倒的に高額なものの、新大阪までの直通運転が実現した場合の便益を費用で割った投資効果(B/C)は3.3で最も高い。さらに、現在走っている在来線特急の収支と新幹線整備後の収支を比較した「収支改善効果」でも約88億円でトップ。所要時間も、長崎―博多間がリレー方式より約31分短い51分、長崎―新大阪間が約45分短い3時間15分となる。想定される工期は約12年だ。

これに対し、FGTを導入する場合の追加費用は発着駅となる博多駅の改良工事内容の違いによって異なり、約800億~1400億円。だが、車両の導入・維持コストがかさむことから収支改善は見込めず、逆に毎年約20億円の赤字という試算が示された。所要時間も長崎―博多間で2分の短縮にとどまる。導入可能な時期も、今後の技術開発が順調に進んだとして9年後。そして最大の問題点は、最高時速が260kmのため、時速300km運転を行う山陽新幹線への乗り入れが困難なことだ。

次ページ意外に工期が長い「ミニ新幹線」
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