「実家暮し独身」が30年で3倍超になった理由 低所得と介護離職が親元未婚を加速させる

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記憶に鮮明な、2006年に起きた「京都認知症母殺害心中未遂事件」はまさにそれです。認知症を患う母親(当時86歳)を一人で介護していた息子(当時54歳・未婚)が、母の首を絞めて殺害。その後、自らも自殺を図ったが未遂に終わった痛ましい事件でした。

日本人は家族だけに依存してしまっている

こうした悲劇を生み出す要因は、日本人の生活意識に見られます。2015年実施の内閣府による国際比較調査(各国60歳以上の高齢者を対象)によれば、「病気や日常生活に必要な作業について家族以外に頼れる人」という設問に対して、日本人だけがほかの国と比べて極端に選択肢がないことがわかります。いかに私たち日本人は家族だけに依存してしまっているかかが明らかです。これは、現役世代のうちに家族以外との「人とのつながり」を構築できていないという証拠でしょう。

これは未婚者だけの問題ではありません。結婚しても皆同様に起こりうる問題です。配偶者や子どもしか頼る人がいない。家族しか頼れない。そんな家族だけへの唯一依存体質、そうした意識を一人ひとりが変えていく必要があります。もちろん、すべてを個人の自己責任に押し付けてしまう社会構造にも問題はあります。

前述した京都の事件の判決の際、裁判官は最後にこんな言葉を残しています。

「本件で裁かれるのは被告人だけではなく、介護保険や生活保護行政のあり方も問われている」

未婚化、晩婚化、少子化、高齢化、離婚増加やそれに伴うシングルマザー増加の問題など多くの問題は、決して個別に切り離して考えるべき問題ではありません。すべて全体として「ソロ社会化」という方向へつながっている問題なのです。だからこそ海外の注目も集めているのでしょう。未婚者だけではなく、結婚しても誰もが「ソロに戻る可能性」があるし、「ソロ社会化」は全員が自分ごととして考えるべきなのだと思います。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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