「生産性2.4%向上は可能 政府は具体的な工程示せ」 リチャード・カッツ
6月19日に経済財政諮問会議が発表した「経済財政改革の基本方針」には、目新しい内容は何一つ盛り込まれていなかった。同報告には威勢のよい目標が列挙されているが、それを実現する方法についてはほとんど書かれていない。答申の内容が抽象的になったのは、安倍首相が公共事業費の3%削減といった具体的な目標を盛り込むことを拒否したためである。
諮問会議が掲げている最も重要な目標は、1991年以降年平均1・6%に低下してしまった労働生産性の伸び率を2・4%まで高めることだ。生産年齢人口が減少するため、経済成長を実現するには生産性を高めるしかない。生活水準を向上させるためにも、また消費税を大幅に引き上げることなく高齢者を支援するためにも、生産性の向上は不可欠なのだ。だが、審議会は目標をどう達成するか語っていない。
生産性の伸び率を2・4%まで高めるという目標は達成可能である。日本の生産性向上は国際的な水準を大きく下回っているので、その水準に引き上げるだけで生産性は飛躍的に改善するからだ。日本は鉄鋼や機械、自動車、エレクトロニクスといった輸出主導型の分野では世界をリードしているが、製造業全体の1人当たりの労働生産性は為替を考慮しないとアメリカを30%も下回っており、10年前の20%よりもさらに悪化している。
日本では雇用が増えているのは生産性が低い分野である。サービス部門の1人当たりの生産性は97年には製造業の65%であったが、2005年には50%にまで低下している。97年から05年の間に製造部門の雇用は減少しているのに、サービス部門の全雇用に占める比率は26%から34%に上昇したためだ。
日本は製造部門からサービス部門へ転換せざるをえない。その転換は、経済が成熟すれば避けて通ることができない。その過程でしなければならないのは、サービス、流通、建設、農業などの分野で生産性を改善することである。95年から05年の間のアメリカの小売部門の生産性の伸び率は、年率4・2%という驚異的な水準に達している。これは新技術を採用したのが理由の一つだが、何といっても最大の要因はウォルマートやホーム・デポのような高生産性の企業が生産性の劣るKマートやシアーズから市場シェアを奪い取り、産業の再編成が行われたからである。
つまり95年以降に飛躍を遂げた企業の大半は“ニューエコノミー”の企業ではなく、金融部門や小売部門、製造部門の企業であった。日本が復興するためには、アメリカと同じような改革が必要なのだ。