中央線「グリーン車」導入に立ちはだかる難問

東京駅での短時間折り返しをどう実現するか

公共交通の始祖である馬車時代から乗車区画の差別化は実施されてきた。鉄道も同様である。当初は軍関係者や上流階級が高い運賃を出して特別な車両にゆったりと乗る方式であり、国電時代の短距離電車線区でも車両の半室を特別室としたような等級別サービスが実施されていた。

戦前戦中の混雑対策として比較的近距離の電車列車は一般車のみの編成として特別車の廃止などが行われてきたものの、混雑が尋常でない京浜東北線や中央線では弱者の救済を目的とした特別料金不要の「専用車」が設定された。これらは「老幼専用車」や「婦人子供専用車」とされ、中央線では高度成長期の混雑期も含めて継続運転されていた。今でいう「女性専用車」の嚆矢とも言えるのが中央線だ。

電車普通列車の特別車両は等級制が廃止されたが、東海道線や横須賀線等は特急・急行などの優等列車同様に「グリーン車」として引き継がれて連結が実施されていた。高度成長期を経て首都圏の国鉄路線の輸送量が大幅に増加したために「5方面作戦」と呼ばれる改善計画が実施されてきた。東海道・横須賀方面は貨物線活用も含めた線増、15両化が行われた。東北・高崎方面も15両化ののちに貨物線を活用した列車増発、常磐線においても複々線化や15両化、千葉方面についても総武快速線の整備や複々線化、そして15両化を推進してきた。

中央線は15両化から取り残された

一方の中央線はというと、複々線化は立川を目指したものの都心からそれほど遠くもない三鷹で止まり、列車編成も10両化までは早かったもののそこで終わりとなった。三鷹以西の高架化前の地上区間では駅前後の踏切がネックとなって駅ホームの延長が不可能だったためだ。

上野東京ラインのグリーン車(写真:tarousite/PIXTA)

現在は三鷹以西の高架が実現しこの問題は解消されたが、電車は今も10両で走り続けている。今回は12両化といっても、定員が少ないグリーン車を連結することでどれだけ混雑緩和効果があるだろうか。

立川までの複々線化については現状高架線の直下にトンネルで急行線を設置する案もあるが、少子化による利用者減少を過敏に予測して実現を目指す雰囲気ではない。定年延長で老齢サラリーマンの引退は進まない。まだ数年は通勤客が減少せず都心「痛勤混雑」はしばらく続くだろう。

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