中央線「グリーン車」導入に立ちはだかる難問 東京駅での短時間折り返しをどう実現するか

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また、青梅以遠や五日市線、八高線などではグリーン車運用が想定されていない。ホリデー快速は拝島で4両の「あきがわ」、6両の「おくたま」に分割されるが、12両化後にグリーン車編成はどう運用されるのだろうか。奥多摩方面は20m車7両以上の運用が不可能であり今後4連に減車されるのか。逆に五日市線も設備は7両まで。これ以上長くなると踏切をふさいでしまう。結局、グリーン車がある編成は青梅以遠にも五日市線にも入れない。中央快速に乗り入れないグリーン車なしの青梅・五日市線編成で運用されるのかもしれない。

グリーン車が定着している東海道線などでは、グリーン車に乗ったらすでに満員で席がないということがよくある。利用者が増加してきた高崎線系でも同様の状態がしばしば起きる。

常磐線ではグリーン車なし編成も

席がない場合には階段や通路で空くのを待つことも想定されるが、揺れる車内の階段部乗車は危険であるし、現実に頻発する非常ボタン扱い緊急停止時はなおさら危険である。中央線では、次列車の空席状態が乗車駅で事前にわかるようなシステムが導入されるのが望ましい。両開きドア化で広がったデッキが座席にありつけない乗客の待機空間にならないことを願うばかりである。

中央線のすべての列車にグリーン車は必要なのかという問題もある。常盤線には15両のグリーンなし編成が混用されている。中央線にもグリーン車なしの12両編成を混在させて混雑緩和を狙ってもよいのではないか。すべての利用者が便利になる、魅力あるグリーン車サービスを実現してもらいたいものである。

ともあれ、新たなサービスがスタートすれば、乗員の新規雇用創出効果は100人規模となる。交通業界としては歓迎すべきこととなろう。

前橋 栄一 東京交通短期大学講師

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まえばし えいいち / Eiichi Maebashi

鉄道総合技術研究所を経て現職。技術士(機械部門)。博物館学芸員。上級デジタルアーキビスト。

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