原発訴訟で「低額の賠償判決」が相次ぐ理由 地域崩壊や放射能汚染でも被害を「過小」認定

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福島地裁いわき支部の裁判官による小川貴永さん宅の現地検証。雑草が庭を覆い尽くしていた(記者撮影)

裁判所はこうした「ふるさと喪失被害」を事実として認定したが、損害賠償は慰謝料増額と合わせて前述のように150万円しか上乗せを認めなかった。

判決文では、「ふるさと喪失慰謝料」と「避難慰謝料」とを、まったく別の慰謝料であるとして評価し、それぞれについて金額を認定したうえで積算することは不可能であるか、少なくともきわめて困難であり、性質上適当なものであるとも言えない、と結論づけている。しかし、その理由については、はっきりと示されていない。

区域外避難者への賠償

3月16日には東京地裁で、いわき市や郡山市など避難指示区域外からの避難者(区域外避難者)が起こした裁判で判決があった。こちらでは東電が必要とされる津波対策を怠っていたことや、国がそれを知りながら規制権限を行使しなかったことを裁判所が認定。原告弁護団の中川素充共同代表は「国や東電の責任を明確に認めた点について高く評価したい」とコメントした。

だが、損害の認定および慰謝料の支払いについては「これまでの区域外避難に関する判決の中では最も高水準だが、それでもなお低く、ケタが一つ違う」(中川弁護士)という。

区域外避難者が被った精神的苦痛に対する慰謝料は、「おおよそ140万~200万円程度」(中川弁護士)の認定にとどまる。今回提訴した区域外の避難者には数万~数十万円程度の賠償金しか支払われていないうえ、今回の判決でも賠償すべき期間について、大人の場合に2011年12月まで、妊婦や子どもで2012年8月までにとどめている。つまり、それ以降は賠償すべき被害はないという判断だ。

こうした裁判所の判断に対して、原告の鴨下祐也さん(49)は、「被害の実態を反映していない」と批判する。というのも、今なお避難元の自宅敷地は放射性物質で汚染されており、看過できないレベルだと感じているからだ。

東京地裁での訴訟で、原告は自宅敷地内の土壌の汚染状況を測定し、裁判所にその結果を示した。中川弁護士によれば、「測定したどの家庭でも、放射線管理区域(1平方メートル当たり4万ベクレル以上)の基準を上回っていた。中には機械で計測できる値を超えてしまったケースもあった」。

放射線管理区域は、放射線による障害を防止するために設けられており、一定レベルの汚染が見つかった場合には、人がみだりに立ち入ることができない措置を講じなければならない。しかし、区域外避難者の自宅周辺でもそうしたレベルの汚染があちこちにある。

自然科学の研究者である鴨下さんは、「実験室でも、今回の測定で判明したレベルの汚染はめったに見られない。被ばくを避けるために避難している実情を裁判所にはきちんと理解してもらいたい」と話す。

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