中部地方から関西を経て中国地方へと向かう高速道路は、大阪府の吹田JCTで、名神高速道路と中国自動車道に分かれる。名神は兵庫県の西宮からは都市高速(阪神高速道路)に入ってしまうのに対し、中国道はその先、まっすぐ行けば内陸部を下関まで一直線。また神戸JCTからは山陽自動車道が分岐して岡山や広島へ、また吉川JCTからは若狭舞鶴道で北近畿へ抜けられるため、西へ向かう車がこの中国道の区間に集中する。
逆もまた同様で、北近畿や関西以西から京都以東へ向かう車も中国道の神戸―吹田間に集中する。
そしてこの区間に、宝塚東(長さ360m)・宝塚西(長さ上り350m、下り240m)の2本のトンネルが立ちはだかる。「宝塚トンネル」とは両者を総称して使う呼び名である。
渋滞のメカニズムについては、別稿で詳しく触れたいが、トンネルでは勾配の変化やトンネルの内と外の明度差の関係などから、渋滞のネックになりやすい。宝塚の両トンネルはまさにその典型例で、休日だけでなく、平日でも朝夕は渋滞しがちな悪名高き区間であった。
今回、開通した新名神は、名神高速道路の高槻から神戸まで、宝塚トンネルを使わずに走れるバイパスルートとなったことで、長年関西の、あるいは関西を通過するドライバーの悩みを解消させてくれる期待を一身に背負っていたのである。
3月18日の開通後の休日の渋滞状況をチェックしてみると、夕方にはまだ宝塚トンネル付近の渋滞が以前よりは短くなったものの見られたし、新名神のほうもこの区間に関西最大級の高速道路の休憩施設、宝塚北サービスエリアができてそこを目当てに訪れる車が集中するなどして一定の渋滞が発生した。
また、その東側の中国道と名神そして近畿自動車道が交わる吹田JCT付近でも渋滞が見られたので、いきなり一気にすべての渋滞が解消するということにはなっていない。NEXCO西日本が発表した開通後1週間の動向では、渋滞回数が開通以前と比べて7割減少し、交通集中に起因する渋滞は5分の1になったとしているので、やはり渋滞がまったくなくなったわけではないことがわかる。
まだ開通間もない状態でドライバーもどの道を使うか試行錯誤している段階でもあるので、新規開通の真価が発揮されるのは、あるいは思ったほどその効果が発揮されていないかどうかを見極めるのは、もう少し先になるだろう。
「渋滞」は日本の高速道路の最大の弱点
人口減少社会を迎え、また各地に次々と新たな高速道路が開通し、また若者の自動車離れといったニュースもありながら、日本の高速道路の渋滞、特に土日のレジャー渋滞や、年末年始、大型連休、お盆を中心とした長期休暇時の渋滞は、高速道路を走る意欲を完全に喪失させるほどのストレスを今もドライバーに与え続けている。単に精神的なものだけではなく、渋滞による移動時間の増加を経済的な指標に換算すると、年間何百億、あるいは何千億円もの損失につながっていると考えられている。
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