宝塚トンネル渋滞は新名神延伸で解消したか 神戸JCT―川西IC開通の効果を探ってみた

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現在、関東では東名高速道路の大和トンネル(神奈川県大和市)付近が渋滞の“名所”となって久しく、今も休日の道路交通情報の渋滞のアナウンスでは、最も名前がよく連呼される“常連”、あるいは“定番”である。中部地方では、東名阪自動車道の亀山JCT周辺が、東西から交通量の多い高速道路が集まってこの道路に車があふれるために、やはり渋滞名所として今も君臨し続けている。

高速道路をめぐる課題

高速道路は、車を運転しない人には一見無関係に見えるが、現在日本の物流の多くは道路交通に依存しており、生鮮食料品も工業製品も、あるいは石油や天然ガスなどエネルギーや製造業の原材料も、もし高速道路が通行できなくなるとたちどころに全国にいきわたらなくなり、生活も企業活動もストップする。近年の大地震や豪雪などの災害で高速道路が数日間通行止めになったときにも、災害が起きた地域と遠く離れた工場で操業停止を余儀なくされるという事態が見られた。高速道路は人体に例えればまさに動脈であり、その血管が詰まれば体の隅々に、つまり日本中に影響を与えるのである。

『高速道路ファン手帳』(佐滝剛弘著、中公新書ラクレ)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

また、近年、大都市圏以外の鉄道は赤字続きで、特にJRの三島会社のある北海道、四国、九州では、ほぼすべての鉄道事業が赤字となっていて、路線の存廃が議論される事態になっているところもあるが、その背景には、これらの会社のドル箱であった都市間輸送を充実著しい都市間高速バスにとって代わられていることが背景には潜んでいる。

仙台と山形の間には、仙山線という鉄道路線があるのに、両都市を公共交通機関で行き来する人たちのほとんどは高密度で頻繁に走る高速バスを利用する。九州でも福岡―大分、福岡―佐賀などの移動は、直通の鉄道があるにもかかわらず、バスのウエイトがかなり高く、しかもその差はますます開いている。

一方で、宝塚北サービスエリアに多くの人が“観光”しに出かけたように、高速道路の施設の充実は著しく、サービスエリアやハイウェイオアシスなどの施設そのものが旅の目的地になっている例も登場している。今後の連載で逐次、高速道路をめぐるさまざまな動向をお伝えしていきたい。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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