「将来の関係に関する政治宣言」をめぐる英国とEUの隔たりの大きさも不安材料だ。メイ首相は3月の演説で、財については、「可能なかぎり摩擦のない取引」を要望し、化学、医薬品、航空産業などはEU機関に準加盟国として参加する意向を示した。さらに、サービス業もFTAに幅広く盛り込み、金融業については相互承認によるアクセスを求めた。
しかしEUは、単一市場、関税同盟からの離脱は「摩擦を伴う」ものであり、産業ごとの単一市場参加も認めない方針だ。サービス市場へのアクセスは「ホスト国」すなわちEUのルールに基づくとし、相互承認によるアクセスに消極的姿勢を示した。
こうした隔たりを乗り越えて、今年10月までに「政治宣言」に必要な大枠合意はできたとしても、新しい関係への円滑な移行が保証されるわけではない。そもそも、わずか21カ月という短い移行期間中に、広範なFTAを締結し、発効までこぎ着けることは、かなり困難な作業とみられる。
激変リスクは先送りされただけか
3月のEU首脳会議での移行期間の合意で、1年後のEU離脱時の激変は回避される見通しとなったが、「離脱協定」に「白色」の条文が散見される現段階では、激変回避は確実とはいえない。英国経済に急ブレーキがかかるリスクも排除はしきれない。
移行期間入り後のFTAの交渉の進捗状況次第では、単に、激変のタイミングが2020年末に先送りされただけということにもなりかねない。
BOEの5月の追加利上げを探る動きの背景には、EU離脱をめぐる不確実性が持続することを前提に、先行きの政策対応の余地を確保しておく必要に迫られていることもあるように感じる。
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