残念な日本…米中貿易戦争の影響は甚大だ 直接的な関税以上のインパクトがある

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これは米国が輸入した鉄鋼350億ドルの14倍にあたる。関税はこうした製品の価格上昇につながる。米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙によれば車輛1台につき300ドルの上昇要因となる。その結果、売り上げが減れば、雇用も失われる。航空機、車輛、機械類といった鉄鋼やアルミニウムを使用する製品を輸出する米国企業も関税によって打撃を受けるため、さらに多くの雇用が失われかねない。

同紙が調査したエコノミスト60人のコンセンサスでは、トランプ大統領の鉄鋼・アルミニウム関税、そして他国による報復によって、米国では雇用が13万7000件純減する見込みだ。全面的な貿易戦争が勃発すれば84万5000件もの雇用が消失する可能性がある(ただし、エコノミストによって予想は大きく異なる)。にもかかわらず、トランプ大統領は貿易戦争に「勝つのは容易だ」とツイートしている。

トランプ大統領の態度が「軟化」したワケ

とはいえ、トランプ大統領がいくらか立場を後退させている理由は、共和党の献金基盤となっている大企業や中小企業が不満の声をあげているからだ。トランプ大統領が前述の献金者に対する演説を行っているとき、献金者たちはトランプ大統領のほかの政策に対してはやんやと沸いたものの、貿易に関する措置について話しているときは沈黙が流れていた。

当初、トランプ大統領はいかなる国に対しても、いかなる適用除外にも反対していた。何らかの適用除外を行えば、そうした要請が大挙して来るだろうと予想していたからだろう。しかし、支持基盤の1つである全米鉄鋼労働組合の組合員がカナダには25万人近くいる(退職者含む)と伝えたことで、(少なくとも今のところであるが)カナダについては「譲歩」した。

トランプ大統領は当初、暫定的にメキシコとカナダを適用除外にし、これと同時に両国がNAFTA再交渉において米国側が望むものを提供しないのであれば再度関税をかけると脅した。これに対して、カナダのジャスティン・トルドー首相は、悪質の合意にひれ伏すくらいならNAFTAを脱退すると脅し返した。

日本にとっての最大の脅威は、トランプ大統領が600億ドル相当の中国の輸出に影響が及ぶ懲罰的関税を賦課する計画を進めた場合に現れる。背景には、米国企業が知的財産の窃盗による被害を申し立てしていることがある。一方で、トランプ大統領は中国に対して、米国との貿易黒字を1000億ドル、つまり25%相当を減らす計画を策定するよう求めた。

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