残念な日本…米中貿易戦争の影響は甚大だ 直接的な関税以上のインパクトがある

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最近トランプ大統領は、共和党の献金者たちの前でこう話した。「われわれは、ずかずか入ってきてわが国のすべてをお払い箱にし、われわれの工場、労働者、そのほかすべてを破壊するこうした人々に、これ以上利用されることを許さない。私が関税を発表したとき、ほとんどの人は、私が彼らのために戦っているのだと考えた」。

共和党支持者の有権者の約7割は、トランプ大統領が発表した鉄鋼・アルミニウムへの関税を支持すると答えた。無党派ではその支持率は29%に下落し、民主党支持者では22%となる。後者の数字は小さいように見えるが、そのうちの多くは投票する党が一貫しない有権者であり、2012年にはバラク・オバマ前大統領に投票したが、2016年にはトランプ大統領に投票している。

鉄鋼業界を奪ったのは「ミニ工場」

さらには、民主党候補に巨額の資金提供をし、多くのボランティア要員を派遣する労働組合は、無条件に関税を支持するか、あるいは関税を批判することを拒否してきた。これが組合員の打撃になるときにおいてさえである。米労働総同盟産業別組合会議が関税を支持している一方、自動車労働者組合はコメントを控えている。その理由は、彼らの組合員のうちのかなり多くが「米国第一」というプロパガンダを受け入れているからだ。

現実はもちろん、貿易によって工場の雇用が失われたり、トランプ大統領の貿易戦争によって、そうした雇用が戻ってくることはない。鉄鋼関連の雇用が1980年の51万4000件から2016年の14万件に急減したことは事実である。しかしその主因は、1980年には5人がかりで生産していたものが、今では1人でできるようになったことである。輸入ではなく、非常に効率の良い「ミニ工場」が、雇用を奪ったのだ。米国が鋳塊を1本も輸入しなかったとしても、鉄鋼関連の雇用はなお急減していただろう。

トランプ大統領の措置は結局、関税のような措置を歓迎している当の有権者たちの多く、そして、共和党に献金している大企業や中小企業に打撃となるという事実である。

米国では、650万人以上が、完成品の金属製品から自動車、航空機、機械類に至るまで鉄鋼を消費する産業に従事している。これは鉄鋼工場の労働者14万人につき46人に当たる。鉄鋼を利用する企業は昨年、合わせて5000億ドル相当の製品を輸出した。

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