ティム・クック氏が説く「倫理教育」の重要性

独占インタビューで語った「未来の教育」

ーー「Everyone can Create」は、まさに私がアップルに期待していたものだったので、今回の発表を嬉しく思っております。

クック:そういっていただけると嬉しいです。クリエイティビティは何よりも大事であるに関わらず学校では欠如しています。誰もが「教科学習」という方法にあまりにも固執し過ぎて、それぞれの教科というサイロの中に止まってしまっているのです。本来、大事なのはその教科と、世の中のもっと広いコンテクスト(文脈)との接点であるべきはずなのに。

ーーつまり複数の学問が交わる「interdisciplinary(学際性)」の重要さ、ということですね。

クック:その通りです。そうしたモノの見方を身につけるのに4年生大学への入学まで待つ必要はありません。むしろ人生のもっと早い段階で身につけるのが良いと思っています。特にクリエイティブなスキルは、子供達が学ぶすべての教科と密接に結びつけて教えられるべきものだと思います。クリエイティビティというのは、何かかけ離れたものではなく、我々が何かを考えるときにその核となるものであり、人生でさまざまな体験をする上でもその糧となるものです。

「コーディング」というものに関してもまったく同じ目で見ています。実は「コーディング」というものもつまるところは自己表現の方法の1つなのです。

そして自己表現はどの教科においても大事なものです。

数カ月前、カナダの学校を視察しました。そこで我々が提供するコーディング教材を数学の授業に取り入れている教員の方と話をしました。

彼女はこの授業の結果、生徒達の習熟度や達成度が突出して高くなったと語っていました。

バラバラと思われていた教科の接点を増やすことの方が、サイロの中にこもらせて勉強させるより学習効果があると思います。これ以外にもいくつかの学校を見てきて、今では自信を持ってそう語れますし、これこそがすべてを変えるのだと思っています。

高等教育にも注力

ーーところで今回の発表内容はK-12(幼稚園から高等学校を卒業するまでの教育)の話が中心でしたが、大学機関などを含む高等教育についてはいかがでしょう。

クック:もちろん、高等教育市場にも非常に力を注いでいます。ただ、高等教育はたくさんの共通項がある一方で、何を学ぶかによって非常に多様性が生まれてしまう場でもあります。もちろん、K-12の教育も国や学校によって差異はあるでしょうが、高等教育の多様性はその比ではありません。だから今日はK-12の発表に絞りました。高等教育市場に関して1つ言えることは、Macの人気が非常に高いということです。なので、近々、また別の形でこの市場について語れればと思います。

ーー日本では2020年を目標に戦後最大と言われる教育改革が実施されます。

クック:よく存じています。

ーー今の時代を先導する企業として、日本の教育はどう変わるべきだと思いますか。

クック:実は日本はコーディング教育に関しては非常に熱心に取り組んでいると思います。クリエイティビティ教育も、まだ初期段階ではありますが取り組んでいます。我々がこれまでに得てきた知見などで必要なものがあれば、惜しみなく共有する準備はありますし、アドバイスもできると思います。

今回の発表会では、さまざまな教科でどのようにテクノロジーが役立てるかをお見せしましたが、そうした提案も共有していくつもりです。

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