日本のEVシフトに立ち塞がる集合住宅の重荷 共同駐車場に充電設備は簡単に入れられない

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横須賀市がEV充電器の補助金を出しているマンション駐車場(記者撮影)

「2020年、あなたが車を買うとしたら、何を買いますか?」

今年2月に都内で開かれた情報会社IHSマークイット主催の講演会で、会場へこんな質問が投げかけられた。出席した人たちの約30%が「航続距離の長い電気自動車(EV)を買う」と回答。その一方で、約30%が「EVは買わない」と答えた。EVの将来性についてはまだ不安も少なくないようだ。

中国や欧米の規制に合わせて、世界中でEVの開発が加速している。EVシフトの流れを受けて報道も過熱しており、「まるで近い将来、すべてのクルマが電動化しようかという扱われ方だ」と不満げに話す自動車業界関係者は少なくない。

一方、EVは生産技術や量産手法など各メーカーがまだ研究中であり、2030年でも販売シェアは7%(デロイトトーマツの予測)と言われている。

使い勝手に疑問を呈する声が多い

そもそも、EVを充電するための環境が整っていないことから、使い勝手に疑問を呈する声が多い。「わが家はマンションで、駐車場にEVを充電するためのコンセントがない」といった声だ。

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総務省の住宅・土地統計調査によると、日本は全住宅に占める共同住宅の比率が約42%(2013年)。共同住宅の住民には充電設備の点でEV購入のハードルが高い。経済産業省の調べではEV購入者の9割が戸建てに住んでいる。

そんな中、EV充電設備の普及に向け、各自治体に動きが出始めている。共同住宅が6割を占める東京都は、国と連携したEV充電設備向けの補助金制度を2018年度予算案に盛り込んでいる。1月の方針発表後、数十件のマンション管理組合から問い合わせが来ているという。東京都江東区もマンションを新築する際にはEV充電設備を設置するようマンション事業者に働きかけている。

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