日本のEVシフトに立ち塞がる集合住宅の重荷 共同駐車場に充電設備は簡単に入れられない

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横須賀市のマンションがEV充電器設置の補助金を受けようとすると、以下のような流れになる。

①「EV充電器を設置したいので補助金を交付してほしい」と市に相談
②EV充電器の使い方・メリットについて、市役所が説明
③設置場所や工期の確認
④費用の見積もり
⑤電力供給能力の調査・図面づくり
⑥マンションの理事会での承認を経て、国に申請
⑦マンションの管理組合総会で可決
⑧補助金交付決定
⑨設置工事開始
⑩補助金の交付

この中の⑤の「電力供給能力の調査」で、設置基準を満たさないマンションが意外と多い。築年数の長いマンションの場合、3基分の充電器を設置するための電力供給がまかなえないケースがある。実際、昨2017年には、ある1棟のマンションからあった補助金申請が、電力供給能力の低さから、交付に至らなかった。

住民全体の理解が得られないかぎり、導入は難しい

次の難関が、住民の合意形成である。上記①~⑩の間に、マンションの管理組合での会議が複数回行われる。そこでは、「EVに乗っている人もいないのに、まだ早いよ」という声があがることが多いという。「非常用電源の蓄電池としても使える」と説明して納得してもらえることもあるが、設置にかかわる費用はマンションの管理組合の予算を使う。住民全体の理解が得られないかぎり、導入に漕ぎつけるのは難しい。設置後にかかる毎月2000~4000円程度の費用は、充電器を備えた駐車場の料金のみに上乗せをするといった工夫も必要だ。

国の補助金を得るには、短期間でマンション住民の合意形成をする必要もある。2017年度の補助金申請期間は4月25日~9月29日と上期のみだった。年度内に工事が終わる案件への補助金であるためだ。マンション管理組合の総会日程によっては、設置計画を進められないケースもあったと経済産業省の担当者は話す。

また、多くの管理組合の役員任期が1年ということもネックになっている。充電器設置に乗り気だった役員が辞めたとたん、「やはり導入しない」という結論になる場合があるのだ。2017年も電力供給能力の審査は順調に進んだが、住民総会で否決され設置に至らなかったケースがあったという。

「2018年度は、これまでの反省を生かして設置数を増やしたい」と横須賀市の小林氏は意気込む。しかし、日本で量産販売されているEVの車種は少ない。日産「リーフ」、フォルクスワーゲン「e-Golf」、BMW「i3」、テスラ「ロードスター」「モデルS」「モデルX」、三菱自動車「i-MiEV」などに限られる。

日本でのEV普及率(保有台数に占めるEVの比率)はたったの0.12%で、新車販売に占めるEVの比率も0.3%でしかない。このような状況の中で、EVに乗らないマンション住民の理解を得て、マンションで充電インフラを拡充させていくのは難しい。EVを普及させたいメーカーや自治体のさらなる工夫が問われている。

週刊東洋経済3月31日号(3月26日発売号)の特集は「電力激変」です
森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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