自律自動運転の世界観が示されはじめた50年ほど前は、ボタンひとつで目的地へと運んでくれるSF的な要素を含んだ発想も見受けられた。そこには、当時の技術者だけでなく自動車ユーザーの未来に対する憧れが含まれていたのかもしれない。しかし、技術革新が進むにつれ、「ボタンひとつで~」という世界の実現には、もう少し時間が必要であることがわかってきた。
その理由は、たとえばインフラストラクチャーである道路網の新たな整備に加えて、車両と車両が通信を行う「車々間通信技術」、道路と車両が通信を行う「路車間通信技術」など、自律自動運転を支える要素技術の普及が車両よりも先に求められるからだ。
また、こうした通信技術には、どんな周波数帯の電波を使い、そしてどんなサービスをどのタイミングで行っていくのかなど、技術の枠組みや使用に関するルール作りも必要である。これには、自動車メーカー間の垣根を越えた話し合いが不可欠だ。
日本政府は当面の理想を…
こうした課題があることから、日本政府は自律自動運転に対する当面の理想を「事故のない交通社会をサポートする技術」として定義づけを行った。運転操作のミスは90%以上が人為的とも言われているが、自律自動運転技術を搭載した車両が普及することによって、ドライバーのうっかりミスを大きく減少させることが期待されている。
2017年中の交通事故による死者数(事故発生から24時間以内)は3694人と前より210人減った(5.4%減)。しかし、いまだに毎年多くの尊い命が交通事故の犠牲になっている。また、前人未踏の超高齢社会に突入した日本におけるドライバーの高齢化対策としても、自律自動運転技術が有効な手だてになるのではないか、との研究も進む。
ACCは、こうした自律自動運転技術の入り口ととらえることができる。センサーが認識した前走車の情報に合わせてアクセルやブレーキ操作が一定の範囲内で自動的に制御されるわけだが、センサーの認識範囲は非常に限定的であることから、システム作動中であっても、アクセルを踏み足したり、ブレーキを踏んだりするといった、センサーの不足分をドライバーの運転操作で補うということが大切である。
これは“人と機械の協調運転”と呼ばれるもので、この徹底こそがACCをはじめとしたADAS(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム/先進運転支援システム)の正しい普及につながると筆者は考えている。
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