完全なる自動運転ができる車は販売されていない
ガソリンエンジンで走る自動車が誕生してから約130年の歴史のなかで、完全なる自動運転ができる車は販売されていない。人がまったく運転操作に介在しない自動走行状態こそ“実験”と名のつく世界では50年以上前から成功していても、誰もが購入できる市販車としては販売されていないのだ。
この先、人工知能の開発が急ピッチで進めば、2020年には自動運転技術を搭載した車両が販売できると断言する自動車メーカーもある。たしかに、高速道路や限られたエリアでの走行という条件がつけば、それは2020年を待たずして可能だろう。
ただ、拙著『2020年、人工知能は車を運転するのか 自動運転の現在・過去・未来』でも触れているとおり、他車や歩行者との共存が求められる実際の交通環境において安全を担保するとなると実現の難易度は上がってしまう。とはいえ、技術革新の力はすさまじい。いずれ人が介在せずとも自動走行が行える車両は販売されるはずだ。
そうなると、今度は“人と機械の歩み寄り”という別の課題が発生する。過去130年は人の手による文字どおりの「手動運転」時代であった。それが通信技術の高度化、詳細な道路情報などを含めたビッグデータの普及、そして精度の高い人工知能によって「自動運転」時代へと移り変わろうとしている。
自動運転の本格的な普及には国主導のインフラの整備が伴うことから大きなビジネスチャンスとして捉える向きもある。また、技術の普及にはロードマップが描けていることから、進捗具合から想定し実現まであと何年、といった計算式も成り立つ。しかし、そこには大切な“人の存在”が欠けている。
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