軽自動車が新車の4割近く売れてしまう理由 これは必然の成り行きだが税金面は懸念だ

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スライドドアを備えた軽自動車が好調に売れる一番の理由は、ユーザーのニーズに的確に応えているからだ。ボディが小さな運転しやすい軽自動車でありながら、車内は小型車サイズのコンパクトカーを上まわるほど広いから、ファミリーカーとしても使いやすい。

たとえばN-BOXの後席を後端までスライドさせると、前後席に座る乗員同士のヒップポイント間隔は1175mmに達する。この数値は全長が5mを超えるレクサス「LS」の1080mmを上まわる。室内幅はレクサスLSがワイドだが、前後方向の足元空間と頭上のスペースはN-BOXのほうが広いのだ。大人4名がゆったりと快適に乗車できる。同様の特徴がタントやスペーシアにも当てはまる。

車内が広いために、後席を畳めば大人用の自転車を積むことも可能だ。「4名乗車+荷物」なら日産セレナのようなミニバンになるが、「2名乗車+荷物」であれば背の高い軽自動車で済ませられる。

この広い車内がユーザーを驚かせ、購買意欲を沸き立たせた。小さなボディと広い車内の組み合わせには、賢さも感じられてトクした気分を味わえる。自転車を積めるほど広い車内が実際に必要か否かは別にして、多くのユーザーに「これが欲しい」と思わせた。

近年では安全装備の充実も、軽自動車の大切なセールスポイントといえる。2012年に先代「ムーヴ」が低速域で緊急自動ブレーキを作動させるスマートアシストを採用すると、一躍人気の装備となった。軽自動車はライバル同士の競争が激しいから、普及が急速に進んで安全性能を競うようになり、今では売れ筋となる軽自動車の多くが歩行者にも対応可能な緊急自動ブレーキを装着する。トヨタの「エスティマ」や「ヴォクシー」の緊急自動ブレーキは、歩行者に対応できていないから、安全装備は軽自動車が勝っているともいえるのだ。

このように軽自動車は、国内向けのカテゴリーとして、日本のユーザーに絞った商品開発を行って人気を高めた。

クルマの価格が全般的に高まった

一方、セダン/クーペ/SUVなどは、今では主に北米や中国などの海外向けに開発されている。日本は副次的な市場になり、3ナンバー車が圧倒的に増えて、内外装のデザインなども国内向けとはいえない。国産のセダンやクーペが日本のユーザーから離れたことも、軽自動車やコンパクトカーの需要を加速させた。

クルマの価格が全般的に高まったことも見逃せない。1990年ごろは排気量1.8~2Lエンジンを積んだ4ドアセダンが200万円以下でも用意されたが、今は安全装備の充実や環境性能の向上に伴って値上がりし、230万~250万円に達する。ヴォクシーやセレナなど背の高いミドルサイズのミニバンとなれば、280万~340万円が売れ筋だ。日本車の価格は、この20年ほどの間に20~50%も値上げされた。

それなのにサラリーマンの平均給与(年収)は、1990年代の後半以降は下降を続け、今でも20年前の水準に戻っていない。クルマが値上げされて給与が下がれば、必然的に軽自動車など小さなクルマに乗り替えるユーザーが増える。「ダウンサイジング」などと体裁の良い表現も聞かれるが、ユーザーの現実はもっと深刻だ。

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