軽自動車が新車の4割近く売れてしまう理由 これは必然の成り行きだが税金面は懸念だ

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軽自動車の価格も決して安くはない。背の高いボディに多彩なシートアレンジと電動スライドドアを備え、安全装備も充実させたN-BOX/タント/スペーシアなどは、標準ボディでもメーカー希望小売価格が140万~150万円に達する。エアロパーツやアルミホイールを装着したカスタム系は160万~180万円だ。

それでも20万円程度のオプションを加えて、200万円に収めることはできる。新車を買うときの価格上限を200万円と考えるユーザーは多く、居住性、積載性、内装の質感なども優れていることから、今では軽自動車が選ばれるようになった。

エコカー減税がクルマ選びの条件

このほかにも軽自動車が好調に売れる要因は多く、出費に関係したメリットではエコカー減税との相性が良い。エコカー減税は2020年度燃費基準(2018年4月30日までは2015年度燃費基準を含む)の達成度合いに応じて減税率を決めるが、車両重量の割にエンジン排気量が小さい(エンジン排気量の割にボディが重い)車種ほど有利になる。そのために全高が1600mm、あるいは1700mmを超える軽自動車、背の高いコンパクトカーやミニバンにはエコカー減税車が多い。

特に軽自動車は前述のようにライバル車同士の競争が激しく、JC08モード燃費とエコカー減税率を競いながら向上させてきた。小型/普通車でエコカー減税が免税(100%の減税)になるのは、主にハイブリッド車とクリーンディーゼル車だが、背の高い軽自動車ならノーマルエンジン車も含まれる。今はエコカー減税がクルマ選びの条件になったから、軽自動車は選択の対象に入りやすい。

さらにいえば、軽自動車が小型/普通車に比べて薄利多売の商品であることも、売れ行きを伸ばす理由だ。軽自動車は基本的に海外で売られないから、大量に製造して、なおかつ国内で売らねばならない。そうなれば販売にも力が入る。

ただし薄利多売で工場の稼働率を落とせないために、大量の在庫を抱えることも多い。このときにしばしば行われるのが、販売会社による自社届け出だ。届け出された実質的に未使用の車両が、中古車市場に放出される。冒頭で軽自動車の販売比率が40%近くに達したと述べたが、この中には自社届け出された車両も含まれる。届け出台数のすべてをユーザーが購入しているわけではない。

このような実質的に未使用の中古車が増えると、中古車価格全般が値崩れを起こして、普通に使われた中古車の価格まで下げてしまう。そうなるとユーザーが愛車を売却するときの金額(言い換えれば車両の資産価値)も連動して下がり、ユーザーに不利益を与えて市場の混乱も招く。そこで業界としては自粛する方向にあるが、依然として走行距離が30km以下の中古軽自動車は数多く流通している。

そして今のように軽自動車の販売比率が40%近い状態が続くと、税収不足に基づく軽自動車増税も懸念される。すでに2015年4月1日以降に届け出された軽自動車は、毎年納める軽自動車税が従来の7200円から1万0800円に増税された。むやみに軽自動車の販売比率を増やすと、さらなる増税を招きかねない。軽自動車の比率は25%程度に抑えたい。

軽自動車の増税については、税金を徴収する国の責任も重い。

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