ピーチとバニラが挑む「甘くない」LCC大激戦 価格競争から抜け出すには統合が必然だった

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ピーチの幹部によれば、経営陣が描いていた長期的な事業計画に以前から中距離への進出は盛り込んでいたという。「2025年くらいにはやらないと、と思っていたが、激しい競争に生き残るためには間に合わない。航空機の性能が上がったうえ、統合も実現し、規模のメリットも生かせる。前倒しが可能になった」(井上氏)。

マレーシアの中長距離LCC、エアアジアXはワイドボディの「A330」型機を用い、すでに成田、関空、新千歳などに乗り入れている(撮影:尾形文繁)

前出のエアアジアXやスクートのような中長距離LCCは、欧エアバスの「A330」や米ボーイングの「787」といった、300席規模のワイドボディ機を用いることが多かった。だが、180席の小型単通路機「A320」のみを保有するピーチにとって、ワイドボディ機は「空席リスクを考えれば、今は現実的でない」(同社幹部)。

”遠くに飛べる小型機”で中距離路線へ

そんな中、航空機メーカーが航続距離を伸ばした単通路機を投入してきた。ボーイングは「737MAX」の納入を始め、エアバスは「A321LR(Long Range)」を現在開発中。両機とも席数はおおよそ200前後で、高い搭乗率を維持しながら、より長い距離を飛べるようになる。井上氏は「まだ機材は決めていない」というが、運航や整備の体制を考えれば、現状と同じエアバス機が有力とみられる。

ピーチの井上慎一CEOは、ピーチカラーのジャケットにハンカチーフで会見に臨んだ(撮影:風間仁一郎)

事業拡大にはパイロットや整備士など、人的資源の確保が不可欠だ。「ピーチがバニラとの統合を決めた最大の理由は、リソースを活用できること」(ANA関係者)。ピーチは来年以降、パイロットの自社養成を始める。それだけ人手不足は深刻であり、バニラと人員を融通できるのは”渡りに船”というわけだ。

数百機単位の航空機を抱える世界大手のLCCと比べると、両社の機材数は合計でわずか34にすぎない。アジアでは豪ジェットスターグループやマレーシアのエアアジアグループといった巨人たちがひしめく。激戦の市場で勝つために残された時間は多くない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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