ジリ貧「テトラポッド」業界、反転攻勢なるか 「消波ブロック」の知られざる実態

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実は、業界トップの不動テトラの収益柱は海洋土木や地盤改良事業であり、会社の源流であるブロック事業は慢性的な赤字が続いている。こうした状況を受け、今年1月にはブロック事業を手がける子会社を吸収合併することを発表した。

売上高推移のグラフが時折突き抜けているのは、震災復興で一時的に消波ブロック需要が急増するためだ。東日本大震災のほか、1995年の阪神淡路大震災や2004年の新潟中越地震でも港湾や河川が被災し、設置していたブロックが破損したことから、一時的に型枠の引き合いが強まった。だが復興需要も一段落し、震災前の水準をも下回りつつあるなど、「特需」頼みでは未来は拓けない。

消波ブロックの新技術

将来性に不安を抱える消波ブロック事業だが、業界からは「減少は底を打った」という楽観的な声も上がる。目線の先にあるのは、既存のブロックの更新需要だ。コンクリートの寿命は一般的に約50年。1960年代の高度経済成長期に爆発的に出現したブロックが、一気に更新時期を迎えるのだ。ブロックの設置を国が音頭を取って進めたこともあり、今回の維持更新も国の政策的な投資が見込めるのでは、と業界は期待を寄せる。

あまり知られていないが、技術開発が進んだ結果、消波ブロック自体も進化を遂げている。代表的なものは、ブロック特有の概念である「空隙(くうげき)率」の向上だ。

立体ブロックは積み重ねるとブロック同士のすき間ができるが、このすき間の割合を空隙率と言う。空隙率が高い、すなわち積んだ際のブロック同士のすき間が大きいほど、少ないブロック数で広い面積をカバーできるためコスト削減につながる。さらにブロックの先端に突起を作って積み重ねても崩れにくくしたり、イオンを放出する特殊な素材を用いてブロックに藻が繁殖できるようにしたりするなど、陰ながら改良が続けられている。

国内での更新需要に加えて、各社は東南アジアやアフリカなどでブロック設置工事を受注するなど、海外展開も進みつつある。アジアには主要なブロックメーカーが存在せず、ブロックがおいていない港湾や河川も多数存在する。経済発展により電力需要が増加することに伴う発電所の建設も追い風だ。沿岸部に建設される発電所には防災対策として消波ブロックが設置されるため、大型案件の受注のチャンスになる。

市場の縮小に歯止めがかからず、じり貧状態だった消波ブロック業界。反転攻勢に向けた模索はしばらく続きそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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