「定年後は3000万円以上必要」は本当なのか 老後のおカネは3つの方法で「見える化」する
「老後資金」はいくら必要なのか。よく目安として挙げられるのが「3000万円」という数字だ。しかし本当に3000万円、あるいはそれ以上が必要なのだろうか。「いまさら、定年までにそんな金額を貯めるなんて、無理!」と悲観的になっている人もいるはずだ。本当に自分に必要な老後資金の額を知る方法について、考えてみよう。
「老後資金3000万円必要説」は、どこからきたのか
そもそも「3000万円」という数字が漠然と広まってきたのは、いつからだろうか。定かではないが、たとえば今から20年ほど前、大手出版社が「老後資金の作り方」を指南した特集を組んだことがある。4人の専門家が投資や、マネーやライフプランニングなどの戦略を語り、「3000万円を貯めるノウハウ」を紹介している。
だが「3000万円説」が出たのはもっと以前だった可能性が高い。特に1980年代後半の日本は好況で、事実上の終身雇用制だったが、その前後までに漠然と意識されたのではないだろうか。
一瞬だけ、1980年代に時計の針を戻してみよう。1985年当時、平均寿命は男性で74.78歳、女性で80.48歳だった。今からは考えられないが、仮に定年を60歳とすると、男性の場合は「その後の人生はほぼ15年」という見積もりが妥当だった。
この観点から、夫婦の老後資金を試算するとどうなるか。まず、20歳から60歳までのあいだ、夫が厚生年金に加入し続けていれば、夫婦で22万円ほどの年金を受け取れる(厚生労働省のモデル年金額より)。そこでここでは定年後の収入を22万円×15年=3960万円とする。一方で、異論もあるが、老後もゆとりある生活を送ろうと思えば、毎月34万9000円の生活費が必要になるとされる(生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」より)。15年間だと6282万円だ。
女性のほうが男性より5歳ほど長生きする傾向にあるので、「妻の5年分」として、夫婦でかかる生活費の半分にあたる毎月17万4500円×5年分=1047万円の生活費を、多めに見ておこう。すると必要な老後資金は6282万円+1047万円=7329万円。そこから収入の3960万円を引くと、3369万円。この数字は若干余裕があり、年齢とともに食費などの支出が減っていくことなども勘案すると、限りなく3000万円に近づくというわけだ(物価などが当時とは違っており、これはあくまで1つの試算の方法に過ぎない)。
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