「定年後は3000万円以上必要」は本当なのか 老後のおカネは3つの方法で「見える化」する

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多くの企業で終身雇用制が生きており、夫はサラリーマンとして働いて厚生年金に加入し、妻はその扶養に入る。そして80歳を迎える頃にはお迎えが来る――。「老後資金3000万円神話」は、そんなライフプランニングが当たり前だった時代に生まれたものなのだ。

必要な老後資金の額は、人それぞれ違う

しかし現在、平均寿命は男女ともに延びる一方だ。2016年の簡易生命表では女性の平均寿命が87.14歳となり、これからは90歳まで生きるのが当たり前の時代になりそうだ。60歳からの15年分をベースに生活費をシミュレーションしていては、足りなくなるのだ。

一方で、終身雇用制が事実上崩壊しつつあり、ひとつの会社で生涯を過ごす人が減った今、年金未加入の時期があったりすることは珍しくない。そもそも厚生年金に加入していない人も増えている。国民年金だけに加入している場合、年金の受給額は厚生年金の場合の約3分の1が目安だ。老後の年金収入が「前述の3000万円シミュレーション」に比べて大幅に減ってしまうこともあるのだ。

しかも、人によっては「3000万円も必要ないよ」というケースもある。ライフスタイルが多様化して、今は結婚しない人や子どもを持たない人もいる。特に子どものいる人といない人とでは、支出の額に大きな差が出る。子どもがいる人では教育資金がそれなりに必要だが、いない人では自分たちへの教育資金はともかく、子どもの分は必要なく、その分を貯蓄に回すことも可能だからだ。

また、自分の望むライフスタイルによっては、月20万円の生活費でも十分だという場合もある。物価の安い地方都市や海外に住んで、質素で落ち着いた生活をしたいというなら、生活費を2000万円以上減らしても問題ないだろう。

このように考えると、3000万円というのは目安に過ぎず、必要額は人それぞれ異なることがわかる。大切なのは、自分の場合はどのくらいの金額が必要なのかを算出し、老後資金を「見える化」しておくことだ。これによって漠然とした不安が消え、今取るべき対策がおのずと明らかになってくる。

次ページ老後資金を「見える化」の3つのステップとは?
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