スーパーなどでは、和牛と国産牛と分けて表記して売られています。国産牛の定義は、品種や出生地にかかわらず、日本で3カ月以上肥育された牛肉。ホルスタインの去勢牛や、ホルスタインと和牛を掛け合わせたいわゆる交雑種と呼ばれるお肉のことですが、和牛も日本で3カ月以上肥育されているので、実は国産牛のひとつなのです。
ただ、ホルスタインや交雑種は、海外の牛種と掛け合わせたハイブリッド牛が多いのが特徴。対して和牛はそのほとんどが日本固有の品種。肉質も味も格段にレベルが高く、生産者そして、消費者にとっても特別なので、“和牛”とあえて分けて扱うのだと思います。
和牛は、肉質の改良を目的に日本独自の基準をもって交配、肥育した牛で、黒毛和種、褐毛和牛、無角和牛、日本短角種の4種類だけです。このところ海外で話題となっている「WAGYU」は、日本の和牛のDNAを持ってはいますが(和牛の遺伝子は50%くらい)、交雑種ですし、日本で生まれ育ってないので“和牛”とは言えないのです。
東北の繁殖、肥育農家を襲った東日本大震災
そもそもなぜ子牛の価格は高騰したのでしょうか? それは、2011年の東日本大震災も影響していると私は思っています。東北には、和牛の繁殖、肥育農家がたくさんありました。ですが、原発事故の影響で、特に福島県では、和牛を育てたくても育てられず、廃業した生産者が少なくありませんでした。この時に子牛の出荷ができず、2011年から子牛も肉牛の出荷も減少していくのです。
子牛が成牛になり出荷を迎える3年後の2014年頃から急激に牛枝肉の卸売り価格が上がり、2015年にピークを迎えました。その後、昨年まで価格の高騰は続き、今も高値で取り引きをされています。震災以降、子牛の数と肥育農家が同時に減ってしまったので、和牛の全体数が減ってしまったので、子牛の価格も上がっているというわけです。
ちょっと余談ですが、私の父の代からの知り合いで、福島・飯舘村でブランド牛「飯舘牛」を育てていたKさんは、被災し飯舘で生活も、畜産もできなくなってしまいました。そこで100頭以上の牛と共に千葉県に移住し、飯舘牛を千葉で育てています。
仲間たちは、飯舘牛を育てるのを諦めてしまいましたが、Kさんだけは飯舘牛の牛作りの思いを守り続けているのです。しかし、千葉で出荷しているので、飯舘牛のブランドは使えません。
Kさんは、和牛育ての名人とも言われた生産者。どんな牛でも、餌、手当ての仕方で作りたいと思う肉質の牛に育て上げられると言い切るまさしく匠。福島には、Kさんのような牛育ての名人がたくさんいたのです。本当に残念です。
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