エンゲル係数の上昇はアベノミクスの結果だ 国会論戦を受けて、分析してみた

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暦年ベースではエンゲル係数は2017年に5年ぶりに小幅低下した(2016年は25.9%で2017年は25.7%)が、依然として高止まりしている。直近数年間でエンゲル係数が上昇した理由として指摘されているものに、(1)生活水準の低下というストレートな解釈と、(2)高齢化などによる生活スタイルの構造変化、(3)消費者の「食」に対する意識の変化、という3つがある。

2013年以降のエンゲル係数の上昇(2017年まででプラス2.2%ポイント)を要因分解すると、消費税率引き上げによって食料価格が上昇した影響がプラス0.6%ポイント、消費税率引き上げ以外の要因による食料価格の上昇の影響がプラス1.5%ポイント、物価変動の影響を除いた実質食料費が変化(減少)したことによる影響がマイナス0.3%ポイント、消費支出全体(エンゲル係数の分母)が変化(減少)したことによる影響がプラス0.3%ポイントだった。アベノミクス以降の円安による輸入物価上昇を背景とした食料品価格の高騰による影響が大きそうだ。

生鮮食品による押し上げ効果は大きくない

生鮮食品価格の上昇が主因で、食料価格はたまたま上昇してしまっただけだと説明されることもある。確かに、ここ数年は食料価格全体よりも生鮮食品価格の上昇幅が大きい。しかし、消費者物価指数全体への寄与は食料全体が1万分の2623であるのに対し、生鮮食品は1万分の414にとどまる。

2013年以降の食料価格は全体でプラス6.5%となったが、そのうちの生鮮食品の押し上げ寄与はプラス2.4%ポイントにとどまっており、上昇の6割強は生鮮食品以外の食料価格の上昇で説明される。また、生鮮食品の価格高騰についても、天候などによる短期的な変動を除けば、飼料の輸入価格上昇によるところも相応にあるとみられる。天候要因などで食料価格が「たまたま高騰した」ということではないだろう。

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