「鈴廣かまぼこ」150年も生き残る老舗の本質

伝統を守り革新を続ける食品企業の成長哲学

鈴廣かまぼこは自分たちの理念が明確だからこそ、思い切ったチャレンジができるのでしょう。言い方を換えると、時代にマッチしたアイデアであっても、理念に反するようであれば、実行には移さないということ。たとえばスイーツがブームになったとしても、チーズケーキ味の商品は開発しません。それでは、同社が大事にしてきた繊細な味が損なわれてしまうからです。

薄利多売や値引きに踏み切らないのも同じ理由。価格を下げるためにはコストカットが必要ですが、工程の削減は品質の低下に直結します。漁獲量に影響を受けるため、不漁のシーズンには価格を上げざるをえませんが、産卵期には漁獲を控えて魚の量を増やすことで、商品価格の高騰を未然に防止しています。

森林保全や魚肥製造などの活動も実施

「魚は無尽蔵に獲れるわけではなく、限りある貴重な資源です。現在は、網にかかっても市場ではあまり価値がないために海上投棄されてしまう未利用魚の活用方法も模索しているところです」(鈴木さん)

自然の循環を俯瞰的にとらえたうえで、かまぼこの生産に取り組んでいる(写真:ファクトリエ提供)

視線の向いている先は海だけではありません。魚が食べるプランクトンには、森から川によって運ばれる鉄分が必要なため、地元の林業が持続できるように植林や間伐材の推進を行うなど、森林の環境保全にも注力。

魚から白身を取り出す際にそぎ落とした骨や皮は有機肥料にし、農家の方たちに提供することで作物の栽培・土壌改善につなげています。

森や田畑の恵みは海にたどり着き、おいしい魚が育まれ、そして最高のかまぼこづくりに帰結していくように、これらの活動はすべて、伝統を守ることに結び付いています。伝統を守るために革新があり、革新はやがて伝統に取り込まれ、また革新が起きる。そんな螺旋(らせん)を描きながら企業やブランドは成長していくのだと、鈴廣かまぼこの取り組みから学ぶことができました。

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