JR各社をまたぐ運賃「通算制度」はここが変だ 乗り継ぎか「自社内」かで1000円以上の矛盾も
●指定席特急料金(東京→岡山)
東京駅から岡山駅までの旅客の乗車区間の営業キロは732.9km。内訳はJR東海が東京→新大阪の552.6km、JR西日本が新大阪→岡山の180.3kmだ。両社の分配率はJR東海が75.4%、JR西日本が24.6%となる。
いっぽう、この区間の指定席特急料金は6860円だ。1円未満を切り捨てて分配するとJR東海が5172円、JR西日本が1687円で合わせて6859円。残った1円は発駅の東京駅が所属するJR東海に分配されるから、JR東海に分配される金額は5173円である。
こちらも併算制であった場合の金額を試算してみよう。東京→新大阪は5700円、新大阪→岡山は3210円で、合計8910円。通算制との差額は2050円となる。JR西日本にとっては少々つらい仕打ちかもしれない。
新幹線乗り継ぎ割引のわな
●指定席特急券(岡山→松山)
岡山駅から松山駅までの旅客の乗車区間の営業キロは214.4km。内訳はJR西日本が岡山→児島の27.8km、JR四国が児島→松山の186.6kmだ。両社の分配率はJR西日本が13.0%、JR四国が87.0%となる。
指定席特急券は本来であれば2900円だ。ところが、新幹線から在来線の特急列車にその日のうちに乗り継ぐ場合で、両者の特急券を同時に購入したときに限って在来線の特急料金が半額になるという規則の適用を受けるため、1450円となる。
この1450円を分配するとJR西日本は188円、JR四国は1261円で、合わせて1449円。端数の1円は発駅の岡山駅が所属するJR西日本に分配されるので、JR西日本に分配される金額は189円だ。
さて、本来の指定席特急券は2900円であったのに乗継割引が適用された結果、1450円となっているので、JR四国にとっては面白いはずがない。割引制度が存在しなければ、JR四国への分配額は2523円となったはずであるからだ。
もともと乗り継ぎ割引とは、新幹線が開業したためにそれまで在来線の特急列車で直通できた区間が分断され、新幹線と在来線の特急列車とを合わせた特急料金が従来よりも割高になってしまうことに対する救済措置として国鉄時代に導入された制度だ。国鉄が分割民営化されたいまではJR四国のような悲劇が生まれてしまう。
そこで、割り引かれた在来線の特急料金分は、新幹線の営業主体であるJR旅客会社も含めて負担するという。
JRシステムによると、「乗継割引適用駅に関連する新幹線乗車区間に対する各旅客会社殿の営業キロ比等で負担額計算を行う」(創立30周年記念行事準備委員会編、『JRシステム30年のあゆみ』、鉄道情報システム、2017年、68ページ)だそうだが、少々わかりづらい。この記述の意味について同社に問い合わせたが、回答できないとのことであった。
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