価格競争が止まらない「ソーセージ」の経済学 好調プリマ「香薫」に大手各社が安売りで対抗

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「香薫」はすでに発売15周年を迎えているが、ここ数年の伸びは著しい。プリマハムによると、「香薫」の販売数量の前年比増加率は2014年度が27%、2015年度が13%、2016年度が25%で、今2017年度も約30%を見込む。ウインナの国内市場自体が過去4年で7%近く拡大しているとはいえ、その伸びをはるかに上回るものだ。

好調の要因としては、「桜スモークの薫り」を特長とした味や手頃な価格への人気もさることながら、ここ数年、テレビCMや販売キャンペーンを積極化した効果もある。キャンペーンの中でも、同社が公式スポンサーに名を連ねる東京ディズニーリゾートの貸し切り招待の懸賞は最大の目玉。同じくスポンサーを務めるレゴランド・ジャパンのほか、なんばグランド花月やハウステンボスへ招待するキャンペーンも展開する。

また、LINEの無料スタンプ配信は若い消費者からの認知度向上に貢献。発売15周年の昨年4~5月には「香薫」の10%増量キャンペーンを実施し、前年同期比約5割の伸びを記録した。同社の営業担当幹部は「若い主婦層が『香薫』のヘビーユーザーになってくれた」と販促効果を喜ぶ。

「香薫」ブランドに一点集中

需要増に合わせて生産面でも効率化と能力向上が進められた。2016年8月には茨城工場で最新鋭のウインナプラントが竣工。生産能力は1.5倍の月産1800tとなり、電力使用量削減などエネルギー効率も高まった。新プラント完成を記念して「香薫」のジッパー付き大袋を発売、大家族向けなど一定の需要をつかんでいる。

「香薫」を生産する茨城工場。最新鋭の設備で生産効率が高まった(写真:プリマハム)

プリマハムはウインナではほぼ「香薫」ブランド一点に集中する戦略。一方で他社は高・中・低価格帯で幅広い商品群を抱える。ライバル会社の関係者は「当社はハムやピザなどを含め品ぞろえが豊富だが、営業マンの数はさほど変わらず、リソース(経営資源)が分散されている」(伊藤ハム関係者)、「プリマは香薫一点に絞り、大ロットで効率が上がっている。当社は全方向でやっているので、一つひとつのブランドへの対応が不十分」(日本ハム関係者)と、反省も込めて「香薫」の強みを指摘する。

価格競争はどこまで進むのか。伊藤ハムの幹部は「ウインナはいわば会社の顔。シェアを守るためには、今後も価格競争はやむをえない」と話す。日本ハムの関係者も「顧客の節約志向もあり、まだまだ続く。体力勝負になるだろう」と言う。

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