三菱UFJ、モルガン・スタンレー日本法人と証券子会社を統合との観測だが、真の課題は国際戦略

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三菱UFJ、モルガン・スタンレー日本法人と証券子会社を統合との観測だが、真の課題は国際戦略

米大手投資銀行モルガン・スタンレーに対し、約30億ドルの普通株および約60億ドルの転換権付き永久優先株式での出資を発表した三菱UFJフィナンシャルグループだが、早くも、証券子会社の再編報道が出ている。

子会社の三菱UFJ証券とモルガン・スタンレーの日本法人とを統合させるとの話だが、三菱UFJ側もモルガン・スタンレー側もそうした合意の存在を否定し、「09年6月30日をメドに提携戦略を具体化していくなかで、さまざまな案を検討していく」としている。

報道の背景には、三菱UFJが90億ドル(約9500億円)の思い切った投資をする一方で、かねてから、三菱UFJ証券の強化が課題となっていることがあり、三菱UFJ側幹部の希望的観測が流れたものと思われる。

三菱UFJ証券は、三菱東京UFJ銀行の顧客基盤を背景に、ディール件数を伸ばしつつあるものの、トムソンファイナンシャルの2007年度のデータによると、日本市場での株式・株式関連では金額ベースで6位で、野村、大和SMBC、日興シティの証券大手3社はもちろんのこと、5位のモルガン・スタンレー日本法人の後塵を拝する形になっている。また、債券部門では、円債総合で4位だが、2位のみずほフィナンシャルグループに水をあけられている(1位は大和、3位は野村)。みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ証券が09年5月に新光証券との合併を予定していることもあり、モルガン・スタンレー側に具体的な提案を行っていくものと見られる。

ただし、こうした国内強化だけが提携の目的ではないはずだ。今回の9500億円出資は、三菱UFJのTier�(中核的)自己資本8兆1202億円の12%近くにも及ぶ巨額投資。主目的はグローバル戦略の強化にある。国際的に金融市場が混乱し、市場機能が麻痺、資産デフレ、レバレッジ(資本に対して負債を膨らませて収益をあげるやり方)の低下により収益機会が縮小しているなかで、シナジーを上げる戦略構築が出来るのかが、真の課題だ。
(大崎明子 =東洋経済オンライン)

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