コンビニ市場の”飽和”は近いのか
セブンは出店攻勢、飽和を見据えローソンが新機軸

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既存店の前年割れは、タバコ販売の減少や天候不順などの要因もあるが、他チェーンとの客の取り合いも影響していると見られる。中でもファミリーマートはおにぎりや弁当など中食分野の売上減が響き、出店費用をカバーできずに減益となった。下期に高付加価値品の投入やコスト削減を進め、通期で最高益を目指すという当初の計画は変えていない。

ブルー・オーシャンを狙いに行くローソン

2位以下のコンビニは競争激化への危機感を募らせている。今期、セブンと同数の店舗増を予定するファミリーマートの中山社長は、13年初の社長就任時「(国内コンビニは)確かに飽和なのかもしれない。試合は最終局面に入っている。9回裏のツーアウトというほどではないが、かなり終盤に来ている」と話していた。

そうした中、新たな動きを見せたのがローソンだ。新浪剛史CEOは中間決算の会見で、「今まで通りのコンビニでは飽和する」と“従来のコンビニ”を脱する必要性を強調。「マチのほっとステーション」にかえて「マチの健康ステーション」という新たなコンセプトを打ち出した。

”従来のコンビニ”からの脱却を図るローソン

これまでローソンは、野菜宅配大手のらでぃっしゅぼーや、大地を守る会などと相次いで資本・業務提携を締結。8月には自社農場ローソンファームの充実化を狙い、土作りにこだわる「中嶋農法」を提唱したエーザイ生科研を買収。“健康コンビニ”を展開する準備を着々と進めてきた。

今後5年間で、ローソンは健康を軸にした抜本的な店舗展開を進める。薬剤師・栄養管理士による健康相談が24時間電話でできるシステムを全店に導入。現在82店舗の医薬品取扱店も3000店に増やす計画だ。また、首都圏を中心に109店ある健康志向を重視したナチュラルローソンを全国展開し、向こう5年で3000店規模にするという。こちらは通常のローソンよりも日販が2割ほど高く、うまく拡大できれば利益の貢献にもつながる。

「私たちがこれまでやってきたのは、レッド・オーシャン(競争の激しい既存市場)。ここ(健康志向のコンビニ)はまだまだブルー・オーシャン(未開拓市場)だ。店舗数も、まだまだ増やせる可能性がある」と新浪CEOは自信満々。従来型コンビニの出店競争から距離を置き、健康をブルー・オーシャンと位置づけたローソンの戦略が吉と出るのか。それとも、出店増に突き進むセブンが盤石な地位をさらに強固なものにするのか。コンビニ飽和論がささやかれる中、それぞれの経営戦略の真価がいっそう問われそうだ。

(撮影:今井康一)

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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