トヨタがEVシフトに見せる尋常ならぬ危機感 豊田社長「これは生きるか死ぬかの戦いだ」

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今年1月のCESで発表したイー・パレット・コンセプトに利用する箱形のEV(右)。豊田章男社長と共にパートナーである有力メーカーの幹部も複数登壇した(記者撮影)

トヨタは初期パートナーとして資本提携するマツダに加え、ライドシェア事業を手がける米ウーバー・テクノロジーズ、中国の滴滴出行、それにアマゾンを紹介。グーグルなどと並んでアマゾンは昨年の株主総会で新しいライバルとして名指ししていたが、音声認識のAIでも提携し、米国で発売する新型車に載せる予定だ。

ITの巨人を巻き込み次世代の覇権争いは混沌

大きなアライアンスを示したものの、まったく気が抜けない。ITの巨人たちはCASEのあらゆる分野で主導権を握ろうと動き出しており、次世代の自動車ビジネスをめぐる覇権争いが混沌としているからだ。

もっともトヨタのイー・パレットを主導したのは2016年に設立した米研究開発子会社「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)だ。頭脳集団を率いるのはAIの権威であるギル・プラット氏だ。1月からトヨタが新設した副社長級のフェローに昇格した。

トヨタは3月2日、東京都内にもTRI同様に自動運転開発などを担う新会社をデンソー、アイシン精機とともに設立すると発表した。最高経営責任者(CEO)はTRIのチーフ・テクノロジー・オフィサーを務めているジェームス・カフナー氏が就任する見通しだ。数年内に発足時の300人から1000人規模まで人員体制を増やし、英語を社内公用語にするという。

トヨタが今年に設定したテーマは「スピードとオープン」。パナソニックとの電池事業による大型提携は序章にすぎず、猛スピードで走り出したトヨタが新たな一手を繰り出す可能性は十分ある。自動車業界は概ね5年単位での時間軸が普通だが、IT企業のそれは比べ物にならないほど短い。

新たな時代に勝ち残るためには、敵か味方かを判断し、矢継ぎ早に手を打たなければならない。それが豊田社長の言う「生きるか死ぬかの戦い」を意味するところだろう。次世代の競争の中で巨艦はどこへ向かうのか。まさに海図なき航海が始まっている。

『週刊東洋経済』3月10日号(3月5日発売)の特集は「トヨタ 生存の条件」です。
冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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