トヨタがEVシフトに見せる尋常ならぬ危機感 豊田社長「これは生きるか死ぬかの戦いだ」

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トヨタ内部では「世界の自動車メーカーが打ち出しているEVシフトは、電池の議論が完全に抜けている。数値目標だけいっても仕方ない」(幹部)との思いがあった。寺師副社長は「電池を制するものが電動化を制する。(パナソニックとの提携で)最後のピースが埋まった」と話す。オールジャパンの開発体制とパナソニックとの提携によって、完全にギアチェンジした格好だ。

そして足場固めと共に新たな将来目標もブチ上げた。それが、2025年頃までにエンジン車だけの車種をゼロにする「電動車普及に向けたチャレンジ」の公表だ。世界で販売する全車種をEV、HV、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)から選べるようにする。

さらに2030年にはこうした電動車両を全販売台数の半分以上の年間550万台以上、そのうち排ガスをまったく出さないZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)といわれるEVとFCVを合計100万台以上販売する計画だ。車載用電池の開発や生産には実に約1兆5000億円を投資する。

中でもEVは2020年以降の中国を皮切りに、日本やインド、米国、欧州でも順次導入し、2020年代前半にグローバルで10車種以上に拡大すると発表した。これまでEVの用途を短距離移動のコミューターに位置付けてきたが、大型車まで品ぞろえを拡充し、実質的に方針転換する。

トヨタの電動化はあくまで全方位

もっとも、豊田社長は「トヨタは電動車のフルラインメーカー」としており、出遅れていたEVのピースを埋めたうえで、あくまで全方位で攻める方針は変えていない。

EV新会社をつくり、パナソニックとの提携で電池という最重要ピースを埋めたうえで、EV、HV、FCVなど電動車の将来目標をブチ上げる。それが、昨年の後半から立て続けに発表を行ったトヨタが描く戦略の全体像である。大々的な攻勢に出たかに見えるが、電動化はCASEの一要素でしかない。

CASEをめぐる主導権争いでは、自動車会社の源泉だったエンジンを中心とするハードウエアの高性能化を競う構図は崩れ、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と呼ばれる移動の快適性や利便性に移る。キーとなるのはAI(人工知能)やデータを駆使するためのソフトだ。さらにはそれらを標準化したプラットフォームも重要になる。

そこで今回のCESでトヨタは「イー・パレット・コンセプト」を発表した。全長が4~5メートルの箱型のEV(写真)は、コネクティッドや自動運転技術を搭載。朝夕にライドシェアサービスとして人を乗せ、昼間は宅配などに使うことを想定している。他社の自動運転システムも載せられるようにするなど、MaaSで標準基盤づくりをリードしたい考えだ。

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