王者アマゾンを脅かす「クラウドAI」開発競争 マイクロソフト・グーグルの頭脳集団が猛追
アジュールのターゲットは企業だ。「オフィス」シリーズに代表されるように、マイクロソフトはこれまで多くの企業と強固な関係を築いてきた。AIの土台となったのも、オフィスや16年に買収したビジネスSNSのリンクトインなどから集められた、ビジネスに関する膨大なデータである。
クラウド上のソフト「オフィス365」にもさまざまなAIの機能が搭載されている。たとえばパワーポイントには、スライド内に書かれた年月日を認識し、自動的に年表にしてくれる機能がある。
AI開発には、つねにアルゴリズムを洗練させる研究が必要になる。同社は16年に研究所を再編し、現在AIの専門組織の下に約8000人の人員を抱える。
その先に見据えるのが、“アマゾン超え”だ。クラウドビジネスの頂点に立つのが、米アマゾンが展開する「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」。3割強のシェアで他を圧倒する。ただ成長率だけを見れば、マイクロソフトはアマゾンを大きく上回る。
グーグルとマイクロソフトがAIで拮抗
同じようにクラウド事業が急成長しているのが、米グーグルだ。年間の売上高は推計40億ドル規模。同社は検索エンジンやマップ、ユーチューブといった10億単位のユーザーが利用するサービスの膨大なデータを抱える。それを活用した機械学習APIを提供し、やはりAIの民主化を標榜する。
アマゾン1強に挑むマイクロソフトとグーグルは、AIにおいては一枚うわてだ。クラウドビジネスに詳しい米調査会社ガートナーのアナリスト、エド・アンダーソン氏は「両社はAIサービスを使いたい客を取り込めている。(AWSと比較すると)長期にわたって収集してきた膨大なデータ、継続的なテクノロジーへの投資、AIの高い能力を示せるだけのアプリケーションをそろえていることが大きな強みだ」と評価する。
AIの開発競争でしのぎを削るマイクロソフトとグーグル。両社のAIによる画像や音声の認識率は、すでに人間の値を超えたとのデータもある。今後の焦点は、「カスタマイズしやすいAI」だ。企業のニーズは多様な一方で、基本的なAPIでは機能が限られる。
たとえば画像認識のAPIに車の写真を読み込ませても、ただ「車」としか認識しない。「プリウス」「フィット」といったように特定の車種を見分けるようにするには、機械学習の専門家がプログラミングを行い、大量のデータを読み込んで学習させる必要があった。
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