王者アマゾンを脅かす「クラウドAI」開発競争 マイクロソフト・グーグルの頭脳集団が猛追

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この領域に両社が入ってきた。マイクロソフトは昨年5月に「カスタム・ビジョン・サービス」、グーグルも今年1月に「クラウド・オートML・ビジョン」と呼ばれる新たな画像認識のAPIを発表。たとえばプリウスというタグを付けた写真をドラッグ・アンド・ドロップで10枚ほど読み込ませれば、AIがプリウスを認識するようになる。

マイクロソフトはすでに画像認識だけでなく、音声認識や翻訳にもカスタムサービスを広げており、より文脈に合った表現を可能にした。一方グーグルは、画像認識アルゴリズムの作成を自動化する仕組みを新たに開発。人手では実現できなかった認識精度まで短時間で高めることができるという。

AIのデータ処理が複雑になればなるほど、応答速度の向上が求められるようになる。クラウドの場合はデータセンターの地理的な距離によって速度が変わる。マイクロソフトは世界に36拠点を持っており、前出のグッゲンハイマー氏は、「地球上で最大のクラウドインフラを持っている」と自信を見せる。実際、AWSは19拠点、グーグルは15拠点にとどまる。

AIを極めるため、半導体チップを自社開発

インフラの規模だけではない。その性能も重要だ。多くの企業は機械学習の訓練のために、GPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)と呼ばれるチップを用いる。本来はゲームのグラフィックス処理に使われていたもので、機械学習の計算に向いている。だが、より応答速度を向上させるため、各社はAI処理に特化した半導体システムの独自開発にも踏みこんでいる。

グーグルが開発した「テンサー・プロセッシング・ユニット(TPU)」。機械学習の計算に特化させるため、自社で一から設計した(写真:Google)

特に熱心なのが、グーグルだ。同社は機械学習用に「テンサー・プロセッシング・ユニット(TPU)」と呼ばれるチップを一から自社で設計。処理速度を上げつつ、消費電力量は抑えた。一方のマイクロソフトは、米インテルのFPGAチップ(製造後でも回路の書き換えが可能なチップ)を基盤とした「ブレインウェーブシステム」を開発した。

これらの半導体システムはすでに、AIを用いた自社のサービスにおける計算で能力を発揮している。今後はこうした機械学習の計算インフラを、外部の開発者にも開放していく方針だ。まさに、AIの民主化はクラウドなしには実現できないといえる。

アマゾン1強は崩れるのか。クラウド全盛時代の覇権争いに注目が集まる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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