日産「セレナ e-POWER」が背負った重大使命 看板車種×「充電不要EV」でヒット連発なるか
加えて、昨年9月には、国内5カ所の車両組立工場で、長年にわたって無資格の従業員が出荷前の完成車を検査していた不正が判明。114万台のリコール(回収・無償修理)に発展したうえ、約20日間の生産停止に追い込まれた。検査員の育成や再発防止策などを徹底させるため、工場の生産スピードを落としてきた(3月末までに完全に正常化する見込み)うえ、リコール作業は現在も続いている。
「不祥事が2年連続だからね。今年こそは何にも邪魔されず、車を売りたいよ」
西日本の日産系販売会社の社長が自嘲ぎみに語るように、販売現場には不満が鬱積している。この会社では昨年10~12月の販売台数は計画比で2割減った。
社長は、2010年の発売以降初めて刷新されるとあって、EV(電気自動車)の新型「リーフ」には高い期待を寄せていた。だが、無資格検査問題を受け、大規模な販促活動は縮小や中止に。売れ筋車種の少なさも従来感じており、e-POWER搭載車種の拡充を待ちわびていたという。
東京都内の日産系販売店関係者もセレナe-POWERに大きな期待を寄せる。「これでやっと本格的な再スタートが切れる。完成車の無資格検査問題で離れていったお客様には、また戻ってきてほしい」
スケールメリットで値下げにも期待
e-POWERのラインナップが広がれば、その効果は拡販にとどまらない。セレナe-POWERに搭載されているモーターやインバーターは、ノートe-POWERやリーフと基本的に同じものだ。スケールメリットが出れば、車の製造コスト低減にもつながる。
リーフの普及には、充電時間の長さや航続距離の短さなどに加えて最低でも300万円以上する価格がネックだ。また、e-POWER搭載車種でも、従来モデルと比べてノートで30万円程度、セレナで45万円程度の上乗せが必要で、選択に悩む消費者も少なくないだろう。e-POWERがますます売れてくれれば、将来的な値下げや生産能力増強も期待できる。
加えて、「e-POWERで電動車の運転の快適さを一度知ってしまったら、通常のガソリン車には戻れない」(星野専務)と言うように、現状ではEVに不安を覚えている層を引き付け、将来のEV購入への道筋を作る役割を担わせる狙いも透けて見える。
日産では中国など海外への投入も含め、今後も売れ筋車種からe-POWERを拡大させる方針だ。セレナの次は、SUV(スポーツ多目的車)の「エクストレイル」への搭載が有力視されている。EVシフトの流れが各国で進む中、日産はe-POWERを国内だけでなく、海外でもキラーコンテンツに育てられるかどうか。目が離せない展開が続きそうだ。
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