DMMが金沢で仮想通貨の「採掘」を始める理由 1000台のマシンが稼働する様子を一般公開へ

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将来的には自社で投資するマイニング事業だけでなく、個人から投資を募り、稼いだ収益を分配する「クラウドマイニング」の計画があることも、ショールームを設ける動機となった。「いただいたおカネをちゃんとマシンに変えて運用していますよ、いつでも見に来ていただけますよ、と打ち出せば信頼を得られる。僕らは1万円とか小口の投資も集めたいと思っているので、消費者の心理的ハードルを下げる必要がある」(川本氏)。

DMM.comの川本栄介・仮想通貨事業部長は、マイニングでも収益性を出せると強調する(記者撮影)

あえて国内の立地を選んだ趣旨は理解できるが、気になるのは収益性だ。川本氏は「現在の仮想通貨の価格相場であれば、日本の電気代でも十分利益が出る」と説明する。マシンの冷却を効率的に行うための研究も進めており、マシン価格やマイニング競争率が上がっても利幅を確保できる体制を作りたい考えだ。

もっとも、今後さらにマシンを増やすにあたっては海外でファームの立地を選定していくという。日本の拠点は利益度外視とまでいかないものの、あくまで広告塔という位置づけ。クラウドマイニングの受け付けを開始する初夏には、海外をベースにトータルで1万台程度のマシンの稼働を目指す。国内外のマイニングファームへの投資は、100億円以上となる見込みだ。

「ブロックチェーンの本質を見せたい」

DMMにとってのマイニング事業は、収益を上げて終わり、というわけではない。同社は1月、ブロックチェーン技術を用いたスマートコントラクト(契約のスマート化)事業を開始。マイニング事業で得た利益をこちらの技術・製品開発に充当していく方針を明らかにした。

なじみのない概念かもしれないが、スマートコントラクトはいわば「究極の個人間取引」。商取引を行う場合では、流通業者や決済業者など第三者が介入しないかたちで、契約をプログラムで自動化する。ブロックチェーンに記述された情報を基に契約が履行されるため、不正防止やコスト削減に寄与するという。

マイニング事業で得た収益は、ブロックチェーン技術を活用したスマートコントラクト事業に充てるという(写真:DMM.com)

「たとえば、アーティストやクリエイターの作品が消費者の手元に届くまでには中間業者がたくさんいて、結局作った本人の元に入るおカネはかなり減ってしまう。ブロックチェーンの大きな価値は、その中間的なコストをなくせること。より大きい利益を享受すべき人に、瞬時に、ちゃんとおカネが渡るようになる」(川本氏)。

まずDMMとしては、数カ月程度で開発できる消費者向けの簡単なサービスから取り組む。グループ内でモノづくり拠点を運営している「DMM.make AKIBA」と連携したIoT関連製品のほか、民泊やゲームなどの分野などでサービス開発の検討を進めているという。

「ユーザーからすると、持っている仮想通貨を使える、決済がスムーズに済むというくらいの認識かもしれないが、ちょっとでもブロックチェーンの本質が垣間見えるようなサービスを作りたい。まずは良い・悪いのフィードバックをたくさん得られれば」(川本氏)。

DMMグループ内では仮想通貨取引所のサービスも立ち上がっており、マイニングやスマートコントラクトの事業との相乗効果を生む可能性はある。各社がこぞって研究開発を進めるこの領域で、頭一つ抜けられるか。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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