市民マラソン大会は誰のためのもの? 地元民が多数落選した名古屋ウィメンズマラソンの"疑惑"

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いったい何が起きているのか。大会の実行委員会事務局に問い合わせてみた。すると、「選考はコンピューターで無作為にしている。居住地を条件に加えることは絶対にない」と固く否定。今年から抽選制にしたことは、むしろ「多くの人に出場の機会を広げるため」と主張する。

「地元率が低い」という指摘は他に来ていないというから、やはり局所的に起きた偶然なのだろうか。ただし抽選という「ブラックボックス」である以上は、こうした勘ぐりがなくならないのも確かだろう。

地元優先の二段階方式も

「大会も3回目にまでなると、『なぜ自分はいつまでも当たらないのか』という声はちょくちょく聞きます」

こう説明するのは10月27日の大会を控える「大阪マラソン2013」の事務局。関西らしく情報はあっけらかんと出してくれた。「応募の段階で大阪府内4割、府外6割。抽選後も自然とこの割合になるので、あえて地元枠を設けようとまでは考えてませんなあ」とのこと。

京都マラソンでは地元民が優先される

一方、事情が180度異なるのはお隣の京都。同じく3回目となる来年2月16日の「京都マラソン2014」に向け、初めて1000人の「京都市民枠」が設けられた。

京都市内在住者はまず1000人の優先抽選の対象となる。そこで落選した場合にも次の全体抽選に入り込むことが可能だ。いわば二段階の選考方式だ。

てっきり地元ランナーを制限するための仕掛けかと思ったら、逆だった。2割を下回っている京都市民の割合を「増やす」ための策だという。

観光都市・京都では放っておけば市外の人が多くなる。京都府ではなく市が自治体として単独で主催する大会でそれはまずい。経済効果としても、市内の交通規制やマラソン以外を目的にする観光客が敬遠するなどのデメリットも計算しなければならない。京都ならではのぜいたくな悩みとも言えるだろう。

この二段階方式は来年2月9日初開催の「北九州マラソン2014」でも2000人の「地元先行受付」という形で採用されている。こちらは「市政50周年記念」という大義名分があるための「義務的」な対応だったが、一日で約6000人の市民が応募。結果的にかなりの地元ランナーが「ふるい落とされる」形となった。

それぞれの事情によって「地元枠」の有無や「地元率」のバランスが図られていくことになるのだろうが、もう少し試行錯誤が必要なのかもしれない。
 

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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