名古屋が元気になるカギはどこにあるのか 名古屋の放送番組を支える企業たち

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実は、このマスクは1枚「約1万円」という値段が付いていた。高機能素材をふんだんに用い、50人ほどの従業員で1枚1枚手づくりするため仕方ないのだという。前述のように、同社は「売らんかな」の意識を感じさせない。

愛知県豊橋市で高性能マスクやフィルターを製造する会社「くればぁ」の中河原毅専務(筆者撮影)

むしろ深刻な感染症が拡大したアフリカ諸国に1万枚を無償提供するなど、社会貢献に熱心だ。だからメディアも取り上げやすく、私もその社会活動面について取材したばかりで、今回の特ダネにつながったのだ。

当の羽生選手は特に公式のコメントは出していないが、その後も同社の製品を愛用し続けている。今年の平昌冬季五輪シーズンも、同社の新商品を付けて移動する羽生選手の姿がたびたび見られた。日本スケート連盟もついに同社と正式なオフィシャルサプライヤー契約を結んだ。コカ・コーラ、全日空(ANAグループ)と並んでの大抜擢となったのだ。

モノづくり業界の再編から生まれるドラマ

こうした小粒でもキラリと光る企業が中部圏には数多い。愛知県が認定する「愛知ブランド」企業だけで約371社。そのうち国内外でトップシェアを持つ「ナンバーワン企業」は174社、他社にない製品や技術を有する「オンリーワン企業」が190社挙げられている(2018年2月現在)。

金型や加工機械などの製造業が中心ではあるが、おなじみの「リンナイ」「シヤチハタ」「敷島製パン(パスコ)」から、ヘアカラーの「ホーユー」、救命救急用バルーンの「東海メディカルプロダクツ」など幅広い。中部圏経済の層の厚さを表している。

オンリーワン企業の1つでもある「くればぁ」も、元々は工場の作業着などを下請けする縫製会社だった。しかし、30年ほど前から社内で扱っていた「メッシュ素材」を生かしてオリジナル製品を手がけようと一念発起。自動車やエアコンのフィルター、そしてマスク製造にも進出し、東京の専業メーカーを驚かせる製品を生み出せるほどになった。

ほかにも従来の下請け、孫請けからの脱却を目指す中小企業は少なくない。「東海ゴム工業」の名で知られた現「住友理工」は、エンジン用ゴムの技術を生かして介護用マットレスや介護ロボットなどを開発。自動車部品のプレス加工が主力だった「横山興業」は金属の研磨技術を応用して「カクテルシェーカー」をつくり、海外の一流バーテンダーにも認められるブランドを立ち上げた。

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